2020 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本映画におけるクィア・キャラクターの表象形態について
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20J10971
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 健太 早稲田大学, 国際学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 戦後日本映画 / 映画研究 / クィア / セクシュアリティ / 男性性 / 映倫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は戦後日本映画における男娼とモダンボーイの表象に関する調査を行い博士論文の章としてまとめた。 2020年度の前期は、1950年代初頭から日本映画に登場する男娼の表象に関する調査を行った。このようなキャラクターを敗戦後の日本における「敗北の文化」と関連付けて論じるために、カストリ雑誌や当時の街娼を描いた「パンパン映画」などに関する文献を参照した。また映画倫理規程管理委員会による審査記録にも目を通し、占領軍による検閲の力が弱まった時代にどのような演出が可能・不可能であったかを調査した。調査の結果を文章としてまとめ、敗戦後に「コメディエンヌ」として登場する男娼の作り出す笑いの効果を多角的に分析した。 2020年度の後期は、戦後日本で人気を博した都会喜劇に着目し、過度に西洋化された日本人の戯画として登場する「女々しい」キャラクターの調査を行った。このような表象を戦前との繋がりを強調するために「モダンボーイ」と呼称することとし、1920年代の「モガ・モボ」言説、日本のモダニティや戦後民主主義に関する文献を頼りに理論を構築した。また都会喜劇のジャンル研究としての視座を広げるために、ハリウッドのロマンティック・コメディやスクリューボール・コメディに関する文献調査も行った。その結果を章としてまとめ、戦後日本における民主主義を具現化した恋愛という行為と「女性化された」男性性との関連を検討した。この研究から市川崑・和田夏十による作品に絞ったものを論文化しアメリカ学会誌へ投稿するために、追加の調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大による図書館施設等の休館の影響はあったが、ほとんどの資料が日本国内で入手可能なため研究の大きな遅延には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度はシスターボーイとゲイボーイの表象に関する調査を引き続き行っていく。また博士論文全体の導入部分を完成させるために、日本映画におけるセクシュアリティ、男性性、「女々しさ」に関する理論の強化を図る。それを踏まえ、すでに執筆済みであるヤクザ映画と「女々しさ」に関する論文を改訂し、2022年度内の博士論文完成を目指す。
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