2020 Fiscal Year Annual Research Report
トキソプラズマの再活性化のタイミングを決定する、分子メカニズムの解明
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20J11138
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
齋藤 大蔵 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | Toxoplasma gondii / excystation / 環境認識 / 電位依存性カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
Toxoplasma gondiiは、ヒトを含めたほとんどの哺乳類や鳥類に感染する。宿主に感染すると脳内等で壁構造に囲まれたシストという構造体をつくり、潜伏感染する。その後、何らかの刺激をきっかけとして、シスト内の虫体がシスト壁を破って周囲に拡散する「シスト再活性化」と呼ばれる現象を起こすことが知られており、免疫不全症例においては致死的な病態につながる。これまでの研究で、宿主細胞内に存在していたシストが細胞外に流出し、細胞外環境の電解質組成に接触することが再活性化の引き金刺激であることを明らかにした。細胞外の様々な条件のうち、高ナトリウム/低カリウムかつカルシウムの存在が必須であることから、電位依存性カルシウムチャネルがこの引き金となっているのではないかと考えて、該当分子をコードすると思われる遺伝子のノックアウトを実施した。ノックアウトのためにCas9タンパク質遺伝子と該当遺伝子に対するgRNAを、シストの形成能力が極めて高い岐阜株に導入したが、Cas9タンパク質の発現が確認できなかった。Cas9が発現しない理由として、本研究で用いた岐阜株は他の株に比べて遺伝子組換えがおこりにくい株であることが考えられる。このことから、岐阜株に対するノックアウトは一度中断し、遺伝子編集が容易なPruΔKU80株を用いたノックアウト実験を実施中である。 また、上記の内容とは別に、再活性化のメカニズムの解明のために、まずT. gondiiのブラディゾイトからタキゾイトへのステージ変換がシスト再活性化以前のシストの内部でおこっているのか、シスト再活性化の後におこるのかを明らかにする必要があることに気づいた。このため、タキゾイト特異的に蛍光する遺伝子組換え株を新たに作成し、本株を用いてシスト再活性化より先にブラディゾイトからタキゾイトへのステージ変換がおこっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、Toxoplasma gondiiのシスト再活性化の機序解明のために、シスト再活性化の引き金となる環境因子を感知する、虫体側の分子の同定を目的としている。本年度は、候補分子をコードしていると思われる遺伝子のノックアウト株の樹立を当初の目的としていた。計画上、複数遺伝子のノックアウトの必要性があるため、比較的容易にノックアウトを可能とするCRISPR-Cas9を用いたノックアウトを行おうとしたが、導入した虫体においてCas9タンパク質の発現が認められなかった。これは、本研究で用いたT. gondii株(岐阜株)が、一般的に組み換え実験に用いられている株に比べて組み換えが起こりにくい系統であることが一因だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の途中で、これまで用いてした株(岐阜株)ほどではないがシスト形成数が多く、かつ遺伝子組換えが容易であるとされる別種の株(PruΔKU80株)を入手した。PruΔKU80株は、相同組み換えによるノックアウトが効率的に行えるとされている株である。このため、CRISPR-Cas9を用いた、岐阜株に対するノックアウト実験は一度中止し、PruΔKU80株に対する、相同組み換えを用いたノックアウトを実施することにした。現時点までに相同組換えのためのベクターが完成しており、現在組換え作業を実施中である。 また、これとは別に再活性化のメカニズムの解明のためには、まずブラディゾイトからタキゾイトへのステージ変換がシストの内部でおこっているのか、再活性化したのちにおこるのかを明らかにする必要があることに気づき、現在はタキゾイトステージ特異的に蛍光する遺伝子組換えT. gondii株を新たに作成し、本株を用いた実験を実施している。
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