2020 Fiscal Year Annual Research Report
成年後見法の法的位置づけに関する研究:アルゼンチン他ラテンアメリカに着目して
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20J11147
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 詩帆 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 成年後見 / 法定後見 / ラテンアメリカ / アルゼンチン民商法典 / アルゼンチン / コロンビア / 意思決定支援 / 障害者権利条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、障害者権利条約12条の要請に応え得る、成年後見法の法的位置づけを検討するために、ラテンアメリカにおいて立法が相次ぐ「意思決定支援制度」に関する研究を行った。 具体的には、2020年12月7日に、オンラインで実施された欠格条項研究会において、「アルゼンチンほかラテンアメリカの『支援(apoyo)』制度」と題する研究報告の機会を得た。本報告では、2014年に公布されたアルゼンチン民商法典について、当該分野の改革を牽引した「私法の憲法化」の流れを入口として、新設された「支援」類型を基軸とした法制度の設計と、抜本的な改革が試みられた「保佐」類型の例外性とを検討した。そして、ラテンアメリカにおける支援制度の立法状況を概観することにより、障害者権利条約12条への適合という同じ方向を目指す中で、極めて似通った法改正を行いながらも、制度構築に差異が表れていることを明らかにした。 また、ラテンアメリカにおける当該分野に関わる最新の立法として、コロンビア法を取り上げた。その成果として、『コロンビアにおける成年後見制度の改正』(戸籍時報807号11-18頁)において、主たる改正点について分析するとともに、『コロンビア成年障害者の法的能力の行使に関する2019年法令第1996号(仮訳)』(戸籍時報808号2-26頁、同809号7-12頁)において、同法の邦訳を公表した。これにより、コロンビアが、アルゼンチンのような他のラテンアメリカの国々でなされた法改正を踏まえ、いかなる法制度を選択したのか、ということについて、今後の検討の土台を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゼンチンの成年後見制度について、旧民法典の時代からの変遷と、現行の「支援」を原則に「保佐」を例外に据えた民商法典における制度について、全体を把握した上で、分析を行うことができた。 もっとも、成年後見制度については、実際の運用に関する検討が必須となるところ、当該分野において重要な役割を担う検察庁等の司法機関の体制が異なることが明らかとなったため、調査に時間を要することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
アルゼンチンの専門家に協力を依頼し、インタビュー調査等、現地での調査を予定している。具体的には、アルゼンチンの首都であるブエノスアイレス自治市、および、ブエノスアイレス州の州都であるラ・プラタ市において、手続法を含め、成年後見制度の実施体制について調査をする。
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