2020 Fiscal Year Annual Research Report
Locality Studies of Popular Music in Postwar Japan: The Case of Tokyo, Osaka and Nagoya
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20J11249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 賢 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ポピュラー音楽研究 / ローカリティ / 地域研究 / 大衆文化研究 / 都市社会学 / グローバリゼーション / 音楽学 / 都市再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、音楽ローカリティ理論に基づいて戦後日本における (1) 東京、(2) 大阪 (3) 名古屋の音楽実践史を分析し、「音楽と地理空間」の往還関係を解明することである。より具体的には、音楽がどのような地理的条件のもとで生成されるのか、そして人々が「音楽と地理空間」の関連性をどのように捉えているのかを研究対象とする。その上で、上記都市を各都市の成立経緯から(1)を「行政・大資本主導のスタイル指向型」、(2)を「自発ネットワーク主導のスタイル指向」、(3)を「行政・大資本主導の問題解決指向型」地域として区分し、それぞれにおいてフィールドワーク、資料収集、テキスト分析を用いた調査を行う。本研究はこうした複雑に入り組んだ戦後日本の都市音楽史を解明し、その成果を基盤として、国内外の事例に適用可能な日本発の音楽ローカリティ理論モデルを構築することを目指す。 本年度は新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックによって、フィールドワークの計画を縮小させ、インターネットやオンライン通話ツール等を用いた調査に切り替える必要性が生じるなど、当初の予定から大小様々な変更を余儀なくされた。しかし、そうした環境下にあっても査読付き学会誌論文の投稿や国内・国際学会での発表を行い、現環境でできる範囲で充実した成果をあげることができた。また、研究で得た専門知を活かしてCOVID-19の被害に直面した音楽文化への支援・情報発信を行うなど、一定の社会貢献を行なった。こうしたローカルな音楽文化の持続性へと寄与することは本研究の大きな目標であり、当初予定していないことではあったが、本研究の社会的意義を示すこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響によって、名古屋や東京へ出向いての大規模なフィールドワーク、および在外研究は不可能であると判断し、①以前から調査を行なっていた東京・渋谷の事例を扱った研究発表、②大阪府におけるフィールドワーク、を行なった。 ①については『ポピュラー音楽研究』へ論文「渋谷へ召還される〈渋谷系〉:ポピュラー音楽におけるローカリティの構築と変容」を投稿した。また3月に大阪大学と英・ハダスフィールド大学間で行われた国際シンポジウムにおいて、この論文を踏まえた発表「Relocalizing Shibuya-kei Music in Shibuya: The Construction and Transformation of Locality in Popular Music」を行なっている。また、大阪大学音楽学研究室の発行している『阪大音楽学報』にて共同研究者であるモーリッツ・ソメの論文を翻訳し「ポピュラー音楽のジャンル概念における間メディア性と言説的構築:『ジャパニーズ・シティ・ポップ』を事例に」として発表するとともに、書評論文として「『シティ』たらしめるものは何か?:シティ・ポップ研究の現状と展望」を執筆した。 ②については、2020年11月に「メジャー・レコード会社と大阪の音楽文化 Amemura O-town Record設立から現在にいたるビーイング・グループの活動実践」の口頭発表を行なったほか、同年12月にはthe 7th Inter-Asia Popular Music Studies Conference 2020にて「Sweet Home Osaka: Americanization and Localization in Postwar Japan」と題した、戦後日本における大阪のポピュラー音楽文化に関する発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
大前提として、依然としてCOVID-19の感染は終息しておらず、ワクチン接種スケジュール次第で研究計画にも随時変更を行なっていく必要性がある。県を跨いだ移動が依然として躊躇われる現状において東京・名古屋でのフィールドワークは以前厳しいため、今年度もオンラインでの調査と資料調査が中心となるだろう。今年度は (1) の東京の事例に関して国内外での出版物へ寄稿することが内定しているため、まずはそちらの執筆に力を入れる。また (2) の大阪の事例についても、学術誌に投稿するべく現在調査・執筆を進めている。在外研究についてはワクチンの接種、および当該国の外国人受け入れ状況に大きく左右されるが、接種が進むであろう秋から冬にかけてイギリス・ロンドンにて資料調査および在外研究を行うことを計画している。人類史に残るパンデミックの前に、当初の研究計画とはゴールが大きく変わってしまったが、歴史の転換点に立ち会った一人の研究者として出来うる研究はすべて行い、その成果を社会に還元していく所存である。
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