2020 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌における新規circular RNAの機能解明とバイオマーカーへの応用
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20J11303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清宮 崇博 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | circular RNA / 膵癌 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は難治癌の代表であり、予後改善のためには早期診断や治療につながる膵癌の病態解明が強く求められている。近年のRNAシークエンス技術の発展によって、circular RNA (circRNA) と呼ばれるノンコーディングRNAの一種が、膵癌をはじめとした様々な癌で異常発現していることが明らかになってきた。本研究ではcircRNAに特化したRNAシークエンスによって、既知のcircRNAの探索にとどまらずに新規の膵癌特異的circRNAの網羅的な同定を試みた。 膵癌および正常膵組織で発現するcircRNAを網羅的に同定するために、2例の膵癌と2例の正常膵組織由来のRNAに対して、circRNAに特化したRNAシークエンスを行なった。全体で58050種類のcircRNAを同定し、そのうち40619種類は既存のデータベースに登録のないcircRNAであった。正常膵組織と膵癌の間で有意に発現変動するcircRNAのうち、12番染色体から転写される新規circRNAが膵癌で高発現することを見出しその全長配列を同定した。また、この新規circRNAはリンパ節転移を有する症例で有意に高発現し、膵癌の病期が進行するほどこの新規circRNAを高発現する症例の割合が多くなる傾向を認めた。 膵癌細胞株BxPC-3にこの新規circRNAを強制発現させたところ、細胞増殖は抑制された。 この新規circRNAは膵癌患者および膵癌の前癌病変である膵管内乳頭粘液性腫瘍 (intraductal papillary mucinous neoplasm; IPMN)患者の血清中から検出可能であり、新たな膵癌診断バイオマーカーとして応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、膵癌と正常膵組織におけるcircRNAの網羅的な発現解析により膵癌で高発現する新規circRNAを同定し、組織における発現様式の検討および血液中のcircRNAの測定を行い、この新規circRNAが膵癌およびIPMNの新たな診断バイオマーカーとして応用できる可能性を示した。以上の内容をJournal of Human Genetics誌へ発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、膵癌で高発現する新規circRNAを同定し、膵癌およびIPMNの新たな診断バイオマーカーとして応用できる可能性を見出している。バイオマーカーとしての有用性を高めるためには測定感度の向上および多数検体を処理できるような測定方法の改良が望ましい。また、血液中の新規circRNAの発現と病期との関連、IPMNからの発癌リスクとの関連、他臓器癌患者血清における発現の有無、既存バイオマーカーであるCA19-9との関連を検討し、実臨床におけるこの新規circRNA測定の有用性を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)