2020 Fiscal Year Annual Research Report
運動タイミングと生活習慣病リスク:位相反応曲線から中枢・末梢時計の"ずれ"の推定
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20J11338
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 喜晃 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / 運動 / 時計遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、運動のタイミングによる中枢時計と末梢時計のリズムの乖離と、生活習慣病リスクとの関連性について検討することを目的としている。 一昨年度に、研究課題の基礎データとなる「運動タイミングが白血球の時計遺伝子発現に及ぼす影響」に関する論文を投稿し、2020年3月に受理、同年4月に公開されている(Tanaka et al., J Appl Physiol, 2020)。この研究では、時計遺伝子の一つであるBmal1の発現量が、タイミングにかかわらず運動自体によって増加することを示した。また、運動しなかった時のピークタイミング(平均16:15)の前に運動するとリズムが前進、その後に運動するとリズムが遅延することも明らかにした。一方で、運動当日しか測定していないため、観察された結果が運動による一時的なものなのか、運動が概日リズムに影響したのかについては結論付けられていない。また、昨年度には、「運動タイミングが24時間の血糖変動に及ぼす影響」に関する論文を投稿し、2021年2月に受理され、4月に公開された(Tanaka et al., Physiol Rep, 2021)。この研究では、血中インスリン濃度が高い時間帯に運動すると、運動中の血糖値が低下し、それによって24時間の血糖変動が大きくなる可能性を示した。加えて、運動のタイミングにかかわらず、運動の次の食事時の耐糖能が低下することも示した。上記の投稿論文の査読者から多くの指摘をいただき、運動のタイミングが体内時計に及ぼす影響、およびそれによる生活習慣病リスクを明確に示すために必要なことを改めて認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度の論文執筆と並行して申請課題の予備検討を進めていたが、コロナの感染拡大防止のための実験停止、研究室への入室制限などにより遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究倫理委員会の承認済みであり、必要物品などの準備も完了しているため、準備に時間を要したが実験開始の目途は立っており、本年度から本格的に実験を開始する予定である。 また、唾液中の時計タンパク質量および口腔粘膜細胞の時計遺伝子発現の解析方法の確立も検討している。これらの指標は、採血と違って侵襲なく、被験者自身で採取できるため、より簡易的にヒトの末梢時計を測定する方法であり、今後実験室レベルだけではなく様々な状況下で体内時計を評価することができる。血中時計遺伝子発現にとともに、血中時計タンパク質量、唾液中時計タンパク質量、口腔粘膜中の時計遺伝子発現も検討し、運動が末梢時計に及ぼす影響をより簡便に測定できる方法をさらに検討していく。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Effect of a single bout of exercise on clock gene expression in human leukocyte2020
Author(s)
Yoshiaki Tanaka, Hitomi Ogata, Momoko Kayaba, Akira Ando, Insung Park, Katsuhiko Yajima, Akihiro Araki, Chihiro Suzuki, Haruka Osumi, Simeng Zhang, Asuka Ishihara, Keigo Takahashi, Junichi Shoda, Yoshiharu Nabekura, Makoto Satoh, Kumpei Tokuyama
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Journal Title
Journal of Applied Physiology
Volume: 128
Pages: 847-854
DOI
Peer Reviewed