2020 Fiscal Year Annual Research Report
Conceptualization and justification of artistic praxes in Hegel's philosophy of art
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20J11516
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岩田 健佑 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 芸術哲学講義 / 批判理論 / ドイツ観念論 / 象徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は海外研究指導委託により、ベルリン自由大学のゲオルク・ベルトラム教授の指導のもとで研究を遂行した。 第一に、2020年4月から参加したベルトラム教授のコロキウムでは、ヘーゲルの芸術哲学に関する討論に参加するとともに、現代批判理論や美学に関する文献を講読し、ヘーゲルの芸術哲学のアクチュアリティを検討した。とりわけ本研究において課題とするところの、ヘーゲルによる芸術の機能の位置づけを、ヘーゲルの言語に関する論考から再構成すること、およびヘーゲルが導入した象徴概念の文献学的検討を行うことに関して了解が得られた。通常ヘーゲルの言語観は、後期の「精神哲学」における記述が取り上げられるが、実際には言語に関するより多面的な記述を芸術哲学や宗教哲学の文脈において展開しており、その多面性を念頭に置きながら芸術哲学における言語理論の特性を明らかにするという方針が明確化された。 第二に、上記の議論を踏まえ、ベルリン市内の諸施設において、ヘーゲルと同時代の象徴、言語、芸術に関する文献および、上記主題に関する日本国内で入手することのできない学位論文を入手した。これによって、ヘーゲルが同時代の芸術、象徴理論をどのように受容し発展させたかに関する道筋をつけることができた。とりわけヘーゲルが明示的に参照しているクロイツァーとの関係について、両者の歴史理解を参照することで、類似点および相違点をある程度明らかにすることができた。 こうした研究成果を発表するために参加を予定していた学会は、現在のCOVID-19感染拡大により軒並み開催が中止されたため、その機会を得ることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の重要な課題の一つである現代の批判理論とヘーゲル芸術哲学との比較検討に関しては、未だ十分に議論が深められたとは言えず、またヘーゲルと同時代の芸術批評との関連についても、より詳細な資料収集を行う必要がある。しかしながら、COVID-19の感染拡大によって、参加を予定していた学会が軒並み中止されたこと、また資料調査を予定していた施設が閉鎖され、往来が制限されたこと、さらに近似する研究主題を有する研究者との交流が著しく阻害されたこと等により、本研究は必然的に遅れざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究状況を鑑みた上で、収集されるべき資料およびより展開されるべき諸問題はある程度明確化された。具体的には、第一に当時の言語、象徴に関する理論からヘーゲルの芸術哲学講義における特徴を明確化し、それが1820年代のヘーゲルの体系構想の中でどのような位置を占めているかを明らかにすること、第二に、そうした理論構成が、ヘーゲルと同時代の芸術批評等に見られる経験の諸相をどのように理論化できているかを明らかにすること、そして第三に、その理論化が現代の批判理論における芸術論の文脈上どの程度の妥当性を有しているかを検討することである。しかしながら、COVID-19の感染拡大の影響により、資料調査等が自由に行えないため、現時点でそれを実行に移すことができない。そこで、日本学術振興会の特別措置を用いることで、可能な限り研究が進められる状況を維持しつつ、感染状況が変化した後に研究を速やかに再開できる状態を確保することに努めたい。
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