2020 Fiscal Year Annual Research Report
In vitro recapitulation of the plant RNA silencing amplification pathway
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20J11529
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 友理希 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / siRNA / RNA依存性RNAポリメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA干渉やmiRNAによる遺伝子制御に代表されるRNAサイレンシングは、20~30塩基長の小分子RNAが相補的な配列をもつ標的遺伝子発現を抑制する現象である。この機構は生物間で広く保存されているが、植物ではさらに脊椎動物や昆虫にはない「RNAサイレンシング増幅機構」が発達している。RNAサイレンシング増幅機構はRNA依存性RNA合成酵素 (RDR)が一部の小分子RNAの標的を二本鎖RNAに変換することで、大量の二次的小分子RNAを生成する機構である。このような機構は獲得免疫システムが未発達な植物にとって主要なウイルス防御機構となっている。しかし、全ての標的が増幅されるのではなく、一部の選択された標的のみ増幅されることがわかっている。本研究では、RDRが特定の標的のみ「見つけ・二本鎖化する」というRNAサイレンシング増幅の核となる分子機構の解明を目指す。 これまでのRNAサイレンシング増幅機構の研究は、植物個体を用いた遺伝学的な研究が中心であったために、詳細な分子機構は不明であった。そこで、本研究では生化学的なアプローチを可能にするため、試験管内RNAサイレンシング増幅再現系の開発を行っている。2020年度は、試験管内系と次世代シークエンス解析を組み合わせた小分子RNAの発現パターン解析を行い、試験管内系で作られた小分子RNAは標的RNA全長に均一にマップされるわけではなく、標的RNAの一部の領域に多くが集中してマップされることを見出した。この「ホットスポット」はシロイヌナズナ由来のサンプルにも存在することから、開発した試験管内系は植物体で作られる二次的小分子RNAの発現パターンを正確に再現できることが明らかになった。この系を用いて更なる解析を行い、RDRが特定の標的のみ「見つけ・二本鎖化する」というRNAサイレンシング増幅の特徴の一つの解明に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
試験管内系と次世代シークエンス解析を組み合わせた小分子RNAの発現パターン解析を行い、開発した試験管内系は植物体で作られる二次的小分子RNAの発現パターンを正確に再現できることを明らかにできただけでなく、試験管内系を用いて、RDRが相補鎖合成するための特徴を見出すことに成功した。さらに、本研究成果を論文としてまとめ、現在リバイズの段階であり、予想よりも速いペースで研究が進んでいるため「当初の計画以上に進展している」という評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の研究を推進する予定である。 ・ TAS3 tasiRNA生成の完全再構成を試みることで、RDRが特定の標的RNAを見つけるために関わる因子の必要十分条件を特定する。 ・ RDR6はどのような塩基配列を持つ標的RNAをより二本鎖化しやすいか、しにくいかという「嗜好性」を解析する。 上記の解析を通じ、RNAサイレンシング増幅機構のさらなる解明を試みる。
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