2020 Fiscal Year Annual Research Report
植物陸上進出の鍵を握る接合藻類アオミドロ属の属内系統関係の全貌解明
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20J11534
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高野 智之 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | アオミドロ / 接合藻類 / 分子系統解析 / 分類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近畿地方を中心として兵庫県、京都府、和歌山県、三重県、青森県、高知県、石川県、福井県、新潟県、島根県、山口県、長崎県、群馬県の合計254地点で採集を行い、他に31地点からサンプル提供を受けた。アオミドロ属のクローン培養株をピペット洗浄法で528株作成し、248株についてDNA抽出及び葉緑体rbcL遺伝子配列をシーケンスした。その塩基配列に基づいて同じ配列を持つ培養株をグルーピングし、新たにrbcL配列の異なる日本産53系統の培養株を得た。 確立された149系統の培養株に関して池谷らによって開発された寒天培地上で培養する有性生殖誘導方法により57株の有性生殖が誘導でき41種について種同定を行った。また、液体培地中の窒素化合物とリン化合物の濃度を調整した培地を用いる接合誘導方法も検討し、65株で試みて24株の種同定を行った。野外から採集したサンプルで有性生殖している個体を観察することでも種同定を行い、栄養細胞を切り離して培養株を確立した。その結果、先行研究で日本産アオミドロ属および近縁属の種は84種知られていたが日本新産種6種を加えた合計90種中、47種について種同定された培養株を確立することができた。 次世代シーケンサーによる葉緑体遺伝子配列の網羅的な解読について、確立された培養株の葉緑体rbcL配列の遺伝的距離(p-distance)を指標として33株を選定した。この33株中の10株について腐葉土を用いた2層培地で大量培養を行なって充分量のDNAを抽出することができた。この10株に関してそれぞれ1-2Gbの配列データを得て、既知の葉緑体ゲノムにマッピングすることで約80遺伝子配列を得て系統解析に用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本各地からの採集及び新規培養株の確立については、概ね当初の予定通りに進んでいる。また、有性生殖中の野外サンプル及び培養株の有性生殖誘導から、有性生殖に関する形質を観察を行い種同定された培養株の数を増やすことができた。また、次世代シーケンサーによる葉緑体遺伝子配列の網羅的な解析について、大量培養とDNA抽出の手法を検討し確立することができた。今年度は10系統に関して次世代シーケンサーによる配列データを取得し、解析の結果多くの葉緑体遺伝子配列を得ることができた。以上より、アオミドロ属内系統関係の解明は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き日本各地から採集及び新規培養株の確立行う。特に有性生殖誘導によって大量の接合胞子を得られる系統株に関しては接合胞子の電界放出型走査電子顕微鏡による観察など、より詳細な形態観察を試みる。次世代シーケンサーを用いた葉緑体遺伝子配列の網羅的獲得については、今年度の10系統に加えて、残り23系統のシーケンスを予定している。
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Research Products
(4 results)