2020 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおける種子プライミング技術を用いた陸稲栽培体系の確立
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20J11707
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中尾 祥宏 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 土壌水分 / 乾燥ストレス / 種子 / 出芽 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、本研究では播種後の初期生育環境条件がプライミング効果に及ぼす影響と、プライミングによる生育促進メカニズムを明らかにするために比較・検討を行った。品種と土壌水分条件の交互作用から、乾燥土壌条件下でプライミング処理による出芽時間が短縮することを明らかにした。また、当該地域における陸稲品種であるNERICA4について土壌水分条件とプライミング効果の特徴を分析するとともに、多変量解析を行った結果、プライミング処理区は無処理区に比較して出芽時間が短くなる傾向が認められた。また、湿潤土壌で地上部の生育量と出芽時間の間に有意な負の相関関係が認められた。このことから素早い出芽が出芽後の生育の向上に寄与しているというプライミング効果について、弱い土壌水分ストレス条件下で顕著な応答であることが示唆された。一方で、極めて厳しい乾燥土壌条件下ではプライミング処理区と無処理区の間に出芽時間の有意差は認められないものの、プライミング処理区では根が発達して、出芽後に地上部の生育が促進された。多変量解析においても前述の内容を支持する結果が得られた。さらに、発芽・出芽が抑制される厳しい乾燥条件についても検討を行ったところ、種子が長期間土壌中に保持されると、未発芽種子においては処理区間のアミラーゼ活性、抗酸化酵素活性、及び再播種後の出芽率の差異は認められなかった。これらのことから、土壌水分条件に応じて異なるイネ実生の成長に応じたプライミング効果について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プライミング技術を用いた陸稲栽培体系の確立のためには幅広い土壌水分条件下で安定的な生育を得ることが必要となる。したがって当該年度は環境条件によって多様であると考えられるプライミング効果と、そのメカニズムを明らかにするための検討を中心に行った。そのために、土壌水分条件とプライミング効果の関係を整理し、多変量解析によってプライミング種子の初期生育の動態を詳細に検討した。さらに、現在は前述の結果から環境によって変化するプライミング効果について生育期間を通じたデータの体系化を試みている。このように当初の計画に沿って研究が推進された。また、学会発表がなされたこと、国際誌に論文が受理されたこと、投稿中の論文も複数あることからも概ね順調に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、イネ種子のプライミング効果が現れにくいとされている環境下におけるプライミング種子の生育のメカニズムを明らかにする。そこで、不良環境下においてイネ実生の形態的なパラメーターと生理的なパラメーターを定量的に解析する。その後、各パラメーターが、どの程度生育向上に寄与しているのかを解析し、プライミング種子の初期生育の動態をより詳細に明らかにする。特に、プライミング効果が緩慢になるとされる湿潤条件下については、高土壌水分、湛水、及び冠水等、環境条件を詳細に制御しさらなる検討を加える。そこでは、嫌気発芽性の品種として報告されている遺伝資源とプライミングを組み合わせた検討を行うことも予定しており、嫌気条件下でのプライミング効果が現れる生理的なメカニズムを詳細に検討する。また、これまで明らかにしたプライミング種子の初期生育の動態を参考に、環境によって変化するプライミング効果について生育期間を通じたデータの体系化を試みる。
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Research Products
(3 results)