2020 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ子宮外組織に及ぼす胚由来因子インターフェロン・タウの影響解析
Project/Area Number |
20J11776
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
國井 宏樹 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | インターフェロンタウ / 子宮頸管 / ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシでは、着床前胚よりインターフェロンタウ(IFNT)と呼ばれるタンパク質が分泌される。IFNTは、子宮内膜組織に作用してインターフェロン誘導性遺伝子(ISGs)の発現を誘導するが、子宮内におけるISGsの機能については不明である。一方で申請者は、これまでに子宮外組織である子宮頸部においても、子宮内に匹敵する顕著なISGsの発現を見出した。このことからIFNTは、子宮内のみならず子宮頸部にも移行し、着床前特異的に何らかの役割を果たしている可能性が考えられる。しかし、胚から分泌されたIFNTの子宮外への移行動態およびその意義は不明である。そこで本年度は、i)子宮頸部におけるIFNTの直接検出、ならびにii)妊娠および非妊娠ウシ子宮頸部における網羅的な遺伝子発現動態の解析をおこなった。i)について、妊娠および非妊娠ウシ子宮頸部より採取した粘膜・粘液成分において、特異抗体を用いたタンパク質検出実験をおこなったところ、妊娠ウシサンプルにおいてIFNTの顕著なシグナルが検出された。ii)について、RNAシーケンシングにより妊娠および非妊娠サンプルにおける遺伝子発現動態を網羅的に解析したところ、両サンプル間で発現変動する333の遺伝子が明らかとなった。これらと、これまでに報告された着床前妊娠ウシおよび非妊娠ウシ子宮内膜における発現変動遺伝子とを比較し、子宮頸部のみで発現変動した遺伝子群について、データベースに基づく機能解析をおこなったところ、妊娠ウシ子宮頸部において外来細菌やウイルスに対抗する生体防御反応が活性化していること、その反応にISGsが関与することが示唆された。以上からIFNTは、子宮内に止まることなく子宮頸部にも移行し、ISGs発現を介して新規機能を担うことが推測された。これらの知見は、これまで不明であった着床前特異的なISGs高発現の意義解明につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでに報告した妊娠ウシ子宮頸部におけるIFN応答性遺伝子(ISGs)の顕著な発現増加を基盤として、胚由来因子インターフェロンタウ(IFNT)が子宮頸部に移行し、妊娠の維持とは異なる何らかの機能を果たしていると仮説を立てた。この仮説を検証するため本年度は、i)妊娠ウシ子宮頸部由来サンプルにおけるIFNTの直接検出、ii)子宮頸部における網羅的な遺伝子発現動態の解析、の2点を当初計画として設定していた。i)については、特異抗体を用いた検出系によりIFNTの直接検出を実施するとともに、妊娠ウシ子宮頸部サンプルにおけるI型IFN活性の評価や、I型IFN受容体より下流のパスウェイの活性化状態も解析することで傍証を固め、IFNTが子宮頸部に存在することを当初の想定より強固に示すことができたと考える。ii)については、計画通り非妊娠および妊娠ウシ由来子宮頸部サンプルにおいてRNAシーケンシングを実施し、子宮頸部におけるIFNTの機能解析につながる探索的な解析をおこなうことができた。以上から、当初の計画を確実に遂行し、また次の発展につながる十分な知見が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況を踏まえ、今後は、子宮頸部特異的な発現変動遺伝子のうち、重要な役割を担うと考えられる因子について、定量RT-PCRおよびウェスタンブロッティングにより、遺伝子およびタンパク質レベルでRNAシーケンシングの結果を追試する。また、これらの因子の発現がIFNTにより誘導されることを、ウシ組換えIFNTを用いた組織培養系にて検討する。さらに、子宮頸部においてIFNTが重要な機能を担っている場合、子宮頸部におけるIFNTに対する受容性および応答性が、子宮内膜と比較して高い可能性が考えられる。そこで、着床直前期の妊娠ウシ由来の子宮内膜および子宮頸部由来サンプルにおいて、I型インターフェロン受容体の発現を遺伝子およびタンパク質レベルで定量・比較する。加えて、非妊娠ウシ由来子宮内膜および子宮頸部組織に対して同一条件でIFNT感作培養実験をおこない、IFN応答性遺伝子の発現量を定量・比較することで、組織によるIFNT応答性の差異を評価する。
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Research Products
(1 results)