2020 Fiscal Year Annual Research Report
アドレナリン受容体を介したアストロサイトの突起形態制御機構の解明
Project/Area Number |
20J12014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北野 泰佑 北海道大学, 獣医学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | アストロサイト / アドレナリン受容体 / 突起形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイト(AST)は、複数の突起を使って神経細胞や血管と連絡し、中枢神経機能を制御している。これまで、生理的・病態的なASTの突起形態変化が、中枢機能変化に密接に関与すると考えられてきたが、突起形態制御機構は未だ不明な点が多い。本研究では、神経伝達物質「ノルアドレナリン」のアドレナリン受容体(AR)を介した突起形態制御機構の解明を目的とする。これまで本研究において、脊髄培養ASTでは、β-AR活性化が突起形成を誘導する一方、α2-AR活性化は抑制するという新たな知見が得られている。この研究経過を基に、昨年度は主に以下の研究を行った。 まず、α2-ARを介した突起形成抑制の細胞内機構について、脊髄培養ASTを用いて薬理学的に検討した。その結果、α2-ARは細胞内cAMP減少に加えて、cAMP非依存的な機構によっても突起形成を抑制することが明らかになった。また、cAMP非依存的な突起形成抑制機構として、JNKシグナルの関与が示唆された。 次に、ASTの形態や機能は中枢神経領域によって異なることが知られていたため、脊髄および大脳皮質培養ASTを用いて、AR発現やARを介した突起形成制御の差異を検討した。その結果、脊髄に比べて大脳皮質培養ASTでは、β-ARを介した突起形成誘導やcAMPシグナルが強く、α-ARを介した突起形成抑制が弱いという違いがみられた。また、これらの培養ASTではARのmRNAや蛋白発現にも差があり、ARを介した突起形態制御機構がASTの形態的多様性に寄与している可能性が示唆された。 さらに、本研究で得られたin vitroでの知見を、生体内のASTで検討するための実験系の構築を行った。現在までに、幼若ラット(2-3週齢)や成熟マウスの脳の急性スライス標本を作製し、薬物処置後にGFAP(ASTマーカー)免疫染色によりASTの形態を評価する系を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、培養アストロサイトにおけるアドレナリン受容体を介した突起形成制御について新たな知見を得ることができた。また、その研究成果について、論文投稿や学会発表を行った。さらに、生体内・組織内のアストロサイトにおいて、アドレナリン受容体を介した突起形態制御を検討するための実験系をある程度構築することができ、次年度の研究につなげることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、幼若ラットあるいは成熟マウスの中枢神経組織のスライス標本を用いて、in situおよびin vivoのアストロサイトにおけるアドレナリン受容体を介した突起形態制御機構を検討する。スライス標本中のアストロサイトの形態評価は、抗GFAP (アストロサイトマーカー) 抗体を用いた免疫染色により行う予定である。しかし、これまでの検討の中で、GFAP免疫染色では、海馬や大脳皮質腹側という限られた領域でしか明瞭なアストロサイトの染色像が得られないという問題点がみられた。そこで、様々な中枢神経領域において、アストロサイトの突起形態をより詳細に評価するために、Aldh1L1-EGFPマウス(アストロサイトがEGFPで標識されている)も用いて実験を行う予定である。以上の研究により、中枢神経組織内でのアドレナリン受容体を介した突起形態制御機構の全貌の解明を目指す。
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