2020 Fiscal Year Annual Research Report
構造活性相関研究を超高速化する天然物創薬手法の開発と抗薬剤耐性菌薬リードの創製
Project/Area Number |
20J12016
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 一貴 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 抗菌薬リード / 薬剤耐性菌 / 天然物 / 化合物ライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、天然物を基盤として新規抗菌薬リードを開発するため、天然物を2つのフラグメントに分割し、アッセイプレート上で連結することで、迅速に誘導体ライブラリーを構築する方法を開発する。フラグメントの連結反応として、副生成物が生物活性評価に影響を与えない水のみであり、反応が定量的に進行するヒドラゾン形成反応を利用することとした。細菌細胞壁のペプチドグリカン生合成酵素の一つであるMraYを阻害するツニカマイシンおよびムライマイシンを基に、コアアルデヒドフラグメント4種とヒドラジンフラグメント98種を合成し、これらのDMSO溶液をアッセイプレート上で混合、濃縮することで連結反応を行い、合計392種のヒドラゾン誘導体を合成した。合成した全てのヒドラゾンの形成効率を調べるため、LC-MS解析を行った結果、コアの構造に依らず90%ほどはほとんど定量的に反応が進行していた。反応効率が悪いものに関しては、ヒドラジンフラグメントの構造に依存することがわかった。続いて、合成したヒドラゾンライブラリー全てのMraY阻害活性、抗菌活性を評価した。その結果、MraY阻害活性の高い誘導体がいくつか得られた。また抗菌活性はMraY阻害活性とある程度相関していたものの、MraY阻害活性が高いにも関わらず、抗菌活性が全くない誘導体もあった。酵素系だけでなく細胞系での評価も行ったことで、膜透過性も加味した評価を行うことができた。また、天然物がグラム陽性菌にのみ効果があるのに対して、いくつかのヒドラゾン誘導体はグラム陰性菌にも効果があった。続いて、ヒドラゾン結合は加水分解の恐れがあるため、化学的、代謝的により安定なアミド結合へと置き換えた誘導体を合成した。これらのMraY阻害、抗菌活性は、ヒドラゾンライブラリーから得られた結果とよく一致していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、フラグメントの合成とライブラリー構築を行うことを計画していた。現在の進捗では、ライブラリーのMraY阻害活性評価と抗菌活性評価を行い、高活性化合物の同定と再現性の確認まで実施した。また、活性評価の結果を受け、安定誘導体の創製及びその評価も実施できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成したいくつかの安定誘導体は、MraY阻害活性および抗菌活性を評価した。抗菌薬リードとするためには、マウスなどを用いた生体条件下での薬効が望まれることから、マウス等の実験動物を用いた高次評価を実施する予定である。 また、天然物自体はグラム陽性菌にのみ効果を示す一方で、ライブラリーの評価結果ではグラム陰性菌にも効果を示す誘導体が得られている。グラム陰性菌は、緑膿菌をはじめとして多剤耐性菌が問題になっていることから、グラム陰性菌にも効果を示した点は興味深い。そこで、グラム陰性菌にも効果のある誘導体の設計指針とするべく、そのメカニズム解明を実施する予定である。
|