2020 Fiscal Year Annual Research Report
重要樹木病原菌への新分類基準の導入と簡易同定システムの構築
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20J12025
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
服部 友香子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, きのこ・森林微生物研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 分類 / 分子系統 / 樹木病害 / ボトリオスフェリア目 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,重要樹木病原菌である Botryosphaeria 目菌群を中心に,国内の標本庫収蔵標本の形態観察とその菌株を用いた多遺伝子座分子系統解析を行い,分類学的再検討を行なった.日本産ボトリオスフェリア目菌類 123 株の分類学的再検討の結果,Phyllosticta 属菌 5 種, Botryosphaeria 属菌 5 種および Neofusicoccum 属菌 8 種を含む計 18 種を確認した.18 種の内訳は,新種が 4 種, 新組み合わせが 2 種,日本新産種が 3 種であり,日本産樹木寄生性ボトリオスフェリア目菌類の高い多様性が確認された.また,ボトリオスフェリア目菌類において,形態的特徴,生育適温および病原性は,分子系統と関係しており,今後も分類学上の識別子となることが示唆された.特に,分生子の形状および大きさは,属あるいは種の識別に有用であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき,着実に研究課題を遂行した.主要な課題として,重要樹木病原菌である Botryosphaeria目菌群を中心に,標本庫収蔵標本の形態観察と培養性状の調査,その菌株を用いた多遺伝子座分子系統解析を行った.新型コロナイウイルスの感染拡大により,当初予定していた国内外での採集が行えなかったが,国内の標本庫収蔵標本および菌株を供試することで,サンプル数を確保した.これらの成果は筆頭著者として 3 報が査読付き国際誌にて受理もしくは出版され,1 報が国内誌にて受理された.以上の事からおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,引き続き Lasiodiplodia 属やCytospora 属などの植物病原菌類の分類学的再検討を進める他,今年度に分類学的位置が判明した種の画像データを用いて,同定システムの開発のための各分類群の形態画像と分類ラベルを持つデータセットを作成する予定である.尚,今年度は新型コロナウイルスの感染流行により,当初予定していた国内外での植物病害採集は行えなかったため,来年度は,感染状況を確認しつつ,実施可能な範囲での野外調査を予定している.
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