2020 Fiscal Year Annual Research Report
大規模ゲノム情報を用いたパーキンソン病の遺伝学的背景の解明
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20J12189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 龍彦 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | Parkinson病 / HLA / HLA imputation / 深層学習 / 1型糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規のHLA imputation法、DEEP*HLAを開発した。日本人集団と欧米人集団の参照パネルを用いて、精度検証を行い、既存手法よりも特に集団中で頻度が低い希少アレルにおいて精度の上昇を認めた。DEEP*HLAが既存手法よりも精度が上昇した理由を評価するため、距離依存性LD減衰係数を定義し評価した。またSmoothGradを用いてDEEP*HLAの入力感度マップを評価した。DEEP*HLAの実用例として、1型糖尿病のtrans-ethnic MHC fine-mappingを行った。BionBank Japan、UK Biobankの両データにDEEP*HLAを適用し、imputation結果を統合の上、fine-mappingを行った。結果、クラスⅠ、ⅡHLA遺伝子に独立した複数の感受性アレルを同定した(Naito T et al. Nat. Commun. 2021)。 欧米人集団の参照パネルを用いて学習したDEEP*HLAモデルを用いて、UK BiobankのParkinson病のGWASデータにも適用した。また、欧米人GWAS summary statisticsデータ、東アジア人集団のメタアナリシスGWAS summary statisticsデータ、日本人のGWAS summary statisticsデータと統合して、MHC fine-mappingを行った。結果、HLD-DRB1とHLA-Bに独立した感受性アレルを同定した。HLA-DRB1のアレルについて、αシヌクレイン・エピトープへの結合親和性をインシリコ手法により評価したところ、リスクアレルはαシヌクレイン・エピトープに対して、有意に強い結合親和性を呈することを示した(Naito T et al. Mov. Dirord. 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、MHC領域における、Parkinson病の原因遺伝子変異を同定するため、新規のHLA imputation法の開発と、実データへの適用を行った。開発した手法、DEEP*HLAは、既存手法に比べて、希少アレルでのimputation精度の改善に成功した。DEEP*HLAを用いて1型糖尿病のtrans-ethnic fine-mappingを行い、集団間でリスクを共有する複数のHLAバリアントを同定した。 次にDEEP*HLAをParkinson病のGWASデータに適用し、Z値imputationを行ったものとメタアナリシスを行い、Parkinson病のリスクと関連するHLAバリアントを同定し、さらにαシヌクレイン・エピトープへの結合親和性との関連も示すことができた。 上記のように、手法の開発と実証、また実データへの適用による疾患感受性遺伝子変異の同定に成功し、順調な研究経過であったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に開発した深層学習を用いたHLA imputation法、DEEP*HLAを用いて、アレルギー疾患、感染症などについてMHC領域のfine-mappingを行い、新規のリスクアレルを同定し病態研究に役立てるとともに、手法の有効性を実証する。 エクソームシークエンシングデータに適用可能な解析手法を開発する。UK Biobankの保有するエクソームシークエンシングデータを申請の上、ダウンロードする。次に、SNPアレイデータと統合の上、ハプロタイプフェージングを行うなどデータの整備とクオリティコントロールを行う。深層学習を用いて、関連解析に適用可能なハプロタイプベースのゲノム情報の特徴抽出・次元削減法、もしくはハプロタイプベースのゲノム情報を用いた予測モデル構築手法を開発する。これには多様なモデルの構築、パラメータ設定の試行などに長期の時間を要すると予想される。開発に成功した場合は、パーキンソン病を含めたUK Biobankで入手可能な様々な形質に対して実用する。さらに既存のgene-based testやpolygenic risk scoreなどと比較した場合の、開発手法の優位性について評価する。新規の感受性領域を発見できた場合は、ゲノムワイド関連解析の先行研究のサマリ情報量などと照らし合わせて再現性の確認や、文献的検討による生物学的妥当性についての検証を行う。
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Research Products
(6 results)