2020 Fiscal Year Annual Research Report
ブラディリゾビウム細菌の陸域生態系における生存戦略:タンパク質分泌系の役割の解明
Project/Area Number |
20J12228
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 沙和 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | ダイズ根粒菌 / 植物共生細菌 / 菌叢解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bradyrhizobium属細菌はマメ科植物に共生する「根粒菌」として認識されてきたが、近年非マメ科植物や土壌にも存在することがわかってきた。本年度は土壌や非マメ科植物根圏など陸域環境に広く分布するダイズ根粒菌Bradyrhizobium細菌の多様性や環境中での動態および生存戦略を明らかにすることを目的として、非マメ科植物のソルガム根から大規模な分離実験を行い、ゲノム解析および生理試験を組み合わせた研究を行った。分離株の解析結果から、ソルガム根には窒素固定様式の視点から3タイプの当属細菌が棲息していることが明らかになった。また系統解析から、それらはこれまで考えられてきたより多様な系統およびゲノム特性を持つ株によって構成されていることが明らかになった。 特に国内では初の単離となるB. ottawaenseに着目し、代表株のゲノム配列を決定するとともに、競合接種実験や土壌やソルガムおよびダイズ根のアンプリコン解析により土壌-植物系での動態の一端を解明した。また、解読したゲノム配列からB. ottawaense菌株がN2O還元活性を持つことを予測し、精密な活性測定を行うことにより、単離したB. ottawaense菌株が、これまで高いN2O還元活性を持つとされていたB. diazoefficiens USDA110株に比べて約5倍高い活性を持つことを明らかにした。以上より、陸域生態系に棲息するBradyrhizobium属細菌についてこれまで考えられてきたより多様性が高いことを示し、土壌-植物系での動態や窒素循環機能への貢献について新しい知見をもたらした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者が分離した細菌のゲノム解析により、当初予想していなかった機能遺伝子(N2O還元遺伝子)が発見された。この機能遺伝子に着目することにより新たな研究展開を考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 新たに発見された機能遺伝子について、その代謝活性の詳細解析および転写解析を行う。 2) ソルガムから分離されたBradyrhizobium属細菌について、他のイネ科作物も含めて局在性を明らかにする。 3) 分離株のゲノム比較によりソルガム内生細菌の特徴を探る。
|
Research Products
(3 results)