2020 Fiscal Year Annual Research Report
DNA複製複合体の構造変換による、RNAプライマー鎖長の制御機構の解明
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20J12260
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖 啓輔 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | アーキア / DNA複製 / DNAポリメラーゼ / プライマーゼ / 超分子複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アーキア特有の複製ポリメラーゼであるPolDが、DNA合成の初期にはプライマーゼと複合体を形成してRNAプライマー合成を行い、プライマーゼからPCNA (Proliferating cell nuclear antigen) へと複合体のパートナーをスイッチして連続的な合成を可能にするという仮説を実験的に証明することである。これまでの研究で、PolD-PCNA-DNA三者複合体のクライオ電子顕微鏡観察による単粒子解析により、DNA合成モードと間違った合成を修正する校正モードの2種の構造を明らかにすることに成功していたので、本年度はまずこのPolD-PCNA-DNA三者複合体の立体構造解析について研究成果をまとめ、論文として発表した。続いて、複合体形成に関する詳細な分子機構を明らかにするため、解析を進めた。クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析や、酵母ツーハイブリッド法を用いた解析、アミノ酸置換変異体を精製してNative PAGEや表面プラズモン共鳴法、ゲル濾過クロマトグラフィーにより相互作用を分析したところ、PolDはDP2のC末端にある疎水性モチーフである”cPIPモチーフ”を使用してプライマーゼと相互作用する一方で、さらに内側に存在する類似した配列 ”iPIPモチーフ”を使用してPCNAと相互作用することがわかった。PolDとプライマーゼ、PCNA、DNAを用いて複合体の変換について検証したところ、DNAの非存在下ではPolD-プライマーゼ複合体が形成されるが、DNAが加わるとプライマーゼが解離しPolD-PCNA-DNAが形成されることが分かった。このことから、PolDが結合パートナーをプライマーゼからPCNAに交換することによって新生鎖複製の開始モードから連続伸長モードに切り替わるというアーキアの複製進行モデルの提唱を行い、論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超好熱性アーキアThermococcus kodakareneisの複製ポリメラーゼであるPolDと、連続的DNA鎖合成に必須な補助因子PCNA (Proliferating cell nuclear antigen)、及びRNAプライマーの合成を担うプライマーゼの3種のタンパク質を用いて複合体形成に関わる相互作用解析、及び構造解析を行った。PolD-PCNA-DNA複合体の2種類の立体構造を明らかにし、論文としてまとめた (Mayanagi et al., BMC Biology, 2020)。また、DNAの有無によってPolDがプライマーゼからPCNAへと複合体のパートナーを切り替えることを実験的に証明することに成功し、論文として発表した (Oki et al., Nucreic Acids res., 2021)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定ではPolD-プライマーゼ-DNA三者複合体の高分解能の構造情報を、クライオ電子顕微鏡を用いて取得することを目指していたがDNAとの安定な複合体の単離には至らなかった為、PolD-プライマーゼ二者複合体の電子顕微鏡解析とモデル構築を行った。PolDとプライマーゼの相互作用部位部位についてさらに高分解能のデータを取得することを目指して、結晶構造解析及び変異体解析を行っている。また、PolDがCMGヘリカーゼ複合体(MCM-GINS-GAN複合体)とプライマーゼを橋渡しするように相互作用することを発見したので、ヘリカーゼとポリメラーゼの相互作用についても機能・構造解析を進めていく。
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