2020 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における非平衡現象に対する新規数値計算手法の提案及び微視的機構の解明
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20J12265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
道下 佳寛 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 非線形応答 / 非エルミート / 開放量子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用までの準備として、予定していた「強相関電子系における開放系としての性質及び非エルミート効果」についての研究を予定通り完遂した。[Y. Michishita(報告者), and R. Peters, Physical Review Letter: 124.196401(2020) ]
今年度投稿した論文[Y. Michishita(報告者), and R. Peters, arXiv:2012.10603(2020)]では、Green関数における非線形応答のフォーマリズムを確認し、電子相関効果として、繰り込みの効果と散逸の構造について解析した。結果、電子の質量の繰り込みの効果を1/Z =m/m_0 (mは繰り込まれた質量、m_0は繰り込まれる前の質量)とすると、n次の非線形応答は、繰り込まれる前の(1/Z)^(n-1)倍に増強される事が分かった。 散逸の構造については、Green関数を記述する有効ハミルトニアンの非エルミートな部分が単位行列で表現できない時(散逸の構造がある時)、系は既存のband-indexによる解析をする事は出来ず、左右の固有状態を別々に考えたnon-Hermitian band-indexによって解析する必要がある事を示した。その解析によれば、特にフェルミ面での輸送について、例外点が生じるような系において大きな役割を果たし、非線形輸送の係数の符号を変化させたり、非線形伝導度を増強したりする事が分かった。
また、実際にCe3Bi4Pd3において非線形ホール伝導度及び非相反伝導度を数値的に計算し、実験結果の説明、及び、同物質において大きな非相反伝導度が期待されることも示した。[A. Kofuji, Y. Michishita(報告者), and R. Peters, arXiv: 2103.03522(2021)]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強相関電子系における非線形応答について、思いのほか多くの事が分かったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究を引き続き、強相関電子系における非線形応答について研究を進める予定である。また、観測誘起の相転移にも興味を持っており、孤立系の強相関電子系における相転移との対応または対応しない部分について、余力があれば研究を進めていきたい。
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