2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J12287
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
戸ヶ崎 和博 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | オルガノイド / 胃がん / びまん性胃がん / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
消化器上皮は慢性的な環境暴露によって,異なる系統の組織像を呈する“化生”を示すことがある.胃粘膜においては,ピロリ菌感染による慢性的な炎症状態の持続によって,胃の形質を失い小腸や大腸に近い形質を獲得する“腸上皮化生”を示す.“化生”は発がんの母地として臨床病理の特徴となっているが,ヒトのサンプルを用いた適切な実験系の欠如のため,化生および消化器組織の系列特性の喪失・変容の分子基盤の理解は不十分である. 本研究ではオルガノイド培養技術およびエピゲノム解析技術を活用し,ヒトの疾患形成過程における細胞系列特性の喪失・変容を転写因子ネットワークレベルで解析する.またゲノム編集による機能解析を駆使することで,胃上皮における化生および発がん過程について,その分子制御機構の理解を目指す.さらに,オルガノイドの異種同所移植技術を用いてin vivoでの病理組織学的検討を行う. 本年度は多数の正常上皮,化生上皮,がん由来オルガノイドのエピゲノム解析を確立し,データを収集した.また,CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集技術を用いた機能解析を進めた.さらに,オルガノイドを免疫不全マウスに移植することでin vivo解析を行なった. びまん性胃がんのオルガノイドを多数樹立・解析し,さらにin vivo解析を行なった研究成果が2020年11月にGastroenterology誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,オルガノイド解析に最適化したプロトコールを用いて,正常上皮,化生上皮,がん由来オルガノイドのエピゲノム解析(ATAC-seq,ChIP-seq)のプロトコール確立に成功した.さらに,転写因子を正常上皮もしくは化生・がんオルガノイドにノックアウト,もしくは過剰発現させることによって,細胞系列特性の変容をin vitroの実験系で再現できている.また,異種同所移植技術を用いることにより,従来困難であったびまん性胃がん,腸上皮化生,さらには正常胃上皮をin vivoで再現することに成功した.この技術を利用したびまん性胃がんの研究が2020年11月にGastroenterology誌に掲載され,研究は順調な進展をみせている.
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子ネットワーク解析結果から推測される転写因子を,正常上皮及び腸上皮化生オルガノイドにノックアウトし,遺伝子編集オルガノイドについて,培養条件や,in vivo移植での組織形態などのフェノタイプに差が出るか,引き続き検証していく. また,約1800の多種類の転写因子を標的したCRISPR sgRNA ライブラリーを作成している.これを正常オルガノイド,もしくは腸上皮化生オルガノイドに感染させ,特定の培地で培養し続けることで,生存により有利な細胞系列特性変容の因果性を担う転写因子群を一挙に同定可能となる.今後,こうしたCRISPRスクリーニングの結果を基に抽出した転写因子を組み合わせ,より効率的な細胞系列特性操作を行っていく.遺伝子編集オルガノイドについて,免疫不全マウスへの異種移植を行い,in vivoでの病理組織学的検討を行う予定である.
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Research Products
(2 results)