2020 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン神経活動の光計測/光操作による不安制御回路の同定と創薬への応用
Project/Area Number |
20J12341
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 洋幸 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | セロトニン神経 / 正中縫線核 / 不安障害 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
不安障害に対する正中縫線核 (MRN) セロトニン神経の関与に関して、1) 不安惹起/減弱時の神経活動評価、2) 神経活動操作時の行動への影響評価、および3) 正中縫線核神経投射経路の探索と同定を行った。 1) 不安行動試験におけるMRNセロトニン神経の活動変化についてファイバーフォトメトリー法を用いて検討した。不安行動試験にはオープンフィールド試験と高架式十字迷路試験を用いて、セロトニン神経活動の指標となるGCaMP由来蛍光を観察した。オープンフィールド試験では中央区画の侵入時に有意に蛍光が低下し、不安減少時の神経活動の低下が示唆された。一方高架式十字迷路試験では蛍光低下の蛍光は認められるものの僅かであった。 2) 対照群と比較してCheRiff群は有意にオープンフィールド試験における中央区画滞在時間および中央区画侵入回数を減少させ、MRNセロトニン神経の活動上昇は不安行動を増強することが示唆された。 3) MRNセロトニン神経は多数の脳領域に投射している。不安障害の形成や抗不安作用発現に関与するセロトニン神経回路を単離同定しすることは、不安障害への治療効果を有し、副作用が少ない神経回路選択的治療薬の開発に重要である。MRNセロトニン神経に緑色蛍光タンパクを発現させ、順行輸送されたタンパクを各脳領域において免疫染色法にて検出した。脚間核および腹側海馬にて強いタンパク由来蛍光が観察され、かつセロトニントランスポーターの免染結果と一致していた。逆行性トレーサーを用いた実験でも同様の結果となり、MRNセロトニン神経は脚間核および腹側海馬に密に投射することが示唆された。またCheRiffを用いたMRNセロトニン神経の活性化後に脚間核および腹側海馬にてc-Fos陽性細胞の増加が見られ、これらの回路が機能的に働くことも示唆された。今後はこれらの回路に対し機能の詳細を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で示した通り、不安状態を呈する行動試験において、正中縫線核セロトニン神経の活動パターンをファイバーフォトメトリー法により解析した。その結果、不安低減時には正中縫線核セロトニン神経活動が低下することを見出した。これに基づき行った光遺伝学的ツールを用いた実験では、正中縫線核セロトニン神経の活動を増強によって不安様行動が増強することを明らかにした。正中縫線核セロトニン神経の下流のメカニズムに関しては正中縫線核セロトニン神経が密に投射する神経核を同定し、さらに正中縫線核セロトニン神経活性化に伴ってその活動を活性化させることを見出した。発見した回路に関しては不安だけでなく他の症状への影響も現在検討しており、今後は副作用の少ない治療に向けた創薬標的の創出についても検討の進展を期待する。
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Strategy for Future Research Activity |
番号①~④は研究目的と対応している。各試験でマウスは12匹/群を想定。③神経に発現し順行性に軸索へ輸送されたCheriffなどを、各脳領域において免疫染色にて検出、また逆行性トレーサーを下流神経核に投与し、MRNで標識を行うことで、セロトニン神経が支配する神経核および神経種を同定する。下流の神経核に光ファイバーを留置し①および②と同様の検討を実施して、さらに不安以外の症状への影響も検討することで、不安特異的な制御回路であることを確認し、副作用の少ない治療法開発に繋げる。④急性単離切片を用いたパッチクランプ法によって、下流の投射領域においてMRNセロトニン神経終末を刺激した際に誘起される応答を記録する。加えて、セロトニン受容体刺激薬/阻害薬下において同様に検討を行う。ウイルスベクターや薬理的手法により、関与が認められた受容体を活性化/抑制することで、不安様行動に対する治療効果を検討する。
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