2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J12361
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 大智 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 真理 / フレーゲ / 証明論 / 直観主義論理 / 論理主義 / 無矛盾性 / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の成果としては,公理的真理理論の一種であるフレーゲ構造の理論を新たに複数与え,さらにそれらが強い演繹力を持つことを示した.その成果の一部は,2021年3月22日にオンラインで開催されたFourth Workshop on Mathematical Logic and its Applicationsにおいて,題目「Extending supervaluation-style Frege structure by the limit axiom」として発表された.より具体的には以下のとおりである: (1)CantiniやKahleらによって定式化された,超付値(supervaluation)意味論に基づいた真理理論であるフレーゲ構造の理論VFを,極限公理と呼ばれる原理によって拡張した結果が,fefermanによって定式化された集合論T0と同等の強さを持つことを示した. (2)AczelやFefermanによって定式化された種類のフレーゲ構造の理論DTに対して,最小極限公理とよばれる強力な原理を定式化し,それを追加した結果がやはりT0と同等の強さを持つことを示した. 以上はどちらも古典論理上で定式化されてはいるが,証明を見る限り直観主義論理上で再定式化しても同等の強さをもつことがわかる.また,以上のフレーゲ構造はともにT0を相対的に解釈できる点で,表現力の観点からも強力であるといえる.従って,ある程度強力な集合論を包摂できるような構成的理論上の公理的真理理論を得るという本課題の目的に沿った結果であると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で本研究がおおむね順調に進展している理由としては,現時点で知られている(自然な)公理的真理理論としては筆者の知る限り最も強い理論をフレーゲ構造の理論として複数定式化できたことが挙げられる(研究実績の概要を参照).これらの成果をまとめたものが英語論文として投稿される予定である.また,こうした強力な理論を得るために用いられた原理である極限公理については,少なくとも集合論版においてさらなる拡張が知られている(マーロ公理等)ため,それらの真理理論的対応物を考えることで,さらに強力なフレーゲ構造の理論を獲得するという方針も立ちやすいと思われる. また,以上のフレーゲ構造に関する研究とは別に,直観主義算術(ハイティング算術)上の公理的真理理論についても考察を進めている.これまでに古典論理上の有名な真理理論であるKripke-Feferman理論の直観主義的対応版を定式化し,それにT-導入規則(文Aが導出されたらそれが真であることを導いてよい)とT-除去規則(文Aが真であることが導出されたらA自身を導出してよい)を加えた結果が無矛盾であることを示した.古典版ではこれらを加えた結果が矛盾することがよく知られているため,この無矛盾性は直観主義論理上の真理理論を採用するべきである根拠の一つになると期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
フレーゲ構造の理論についてはこれまでの研究を英語論文としてまとめた上で,引き続きさらなる拡張を目指す.特に,マーロ公理の真理理論的対応物の定式化とその証明論的性質の考察を予定している.また,フレーゲ構造において原始的な記号,公理とされている算術が冗長であるかどうか(つまり算術を定理として導出できるか)を考察することで,算術の論理学への還元を目指した論理主義との関係性を明らかにすることも課題である. ハイティング算術上の真理理論に関しては,現在得られている直観主義的Kripke-Feferman理論は古典論理版よりも演繹力が弱いという問題点がある.そこで,反映原理や図式的反映閉包,真理述語に対する帰納原理といった原理を追加することによって,古典版と同等の理論を得ることが課題である. 2021年度の後半には海外挑戦プログラムによる助成を受けてヨーテボリ大学のリー博士を訪問する予定であるため,後者についてはリー博士との共同研究も視野に入れている.
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