2020 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースの熱分解反応制御による有用ケミカルス生産
Project/Area Number |
20J12367
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 高志 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | セルロース / 熱分解 / レボグルコサン / 赤外線加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱分解によりセルロースは効率的に分解される。しかしながら、2次熱分解により生成物の収率及び選択性が減少することが問題となっている。また、2次熱分解反応の中において炭化反応が特に問題視されており、これは主生成物の固体炭化物(チャー)がケミカルスとして利用しにくいことに加え、その生成過程で様々な分解物を与えるためである。このような背景からセルロースの熱分解反応を制御し、セルロースから効率的かつ高選択にケミカルスを生成する手法開発について検討してきた。
本年度では窒素気流下において赤外線加熱を用いてセルロースを急速熱分解する検討を行った。これは、赤外線を吸収しにくい窒素によりセルロースから生成した揮発生成物を気相において冷却し、その2次熱分解反応を抑制可能であることが予想されたからである。その結果、急速熱分解で問題となってる気相における2次熱分解が抑制され、主生成物としてレボグルコサンを比較的高い収率で得られることを明らかにした。レボグルコサンはバイオプラスチックや医薬品の原料として利用可能な有用ケミカルスである。更に、赤外線による分解特性についても詳細に検討した結果、反応初期に生成する炭化物が赤外線を吸収し高温となり、その部分から広がるように急速熱分解が進行することが明らかになった。また、比較的厚い試料を用いた実験においてその表面でのみ分解が進行し、内部のセルロースの温度上昇が緩やかであることが分かった。最終的には厚みのある試料においても全てのセルロースが急速熱分解により分解された。これは、従来の急速熱分解手法において必要とされている微粉化などの前処理が、赤外線による急速熱分解では不要であることを示唆し、今後の工業化などにおいて大きなメリットとなることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外線加熱により急速熱分解において問題視されてきた気相での2次熱分解が抑制され、有用ケミカルスであるレボグルコサンを比較的高い収率で得ることが出来た。更に、試料表面でのみ急速熱分解が進行する分解挙動が明らかになり、厚みのある試料を前処理無しに分解できることも期待された。このような赤外線を用いた化学変換はこれまであまり報告されておらず、本研究のように高い収率でレボグルコサンを得られたという結果は皆無であった。以上の観点からセルロースの効率的かつ高選択的な分解手法に大きく近づけていることを確信しており、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の検討により赤外線加熱がセルロースの変換に有用であることを明らかにした。今後の方向性は2種類を考えている。1つはレボグルコサンの収率をさらに向上するための検討である。このためには、赤外線下における反応の進行をより詳細に調査する必要があると考えられる。そこで、熱分解中のセルロースをハイスピードカメラで撮影しその分解挙動を調査することを予定している。もう1つの方向性としては触媒を用いてレボグルコサン以外の生成物を得る手法の開発である。これについては金属を用いた検討を考えており、ガス化等への応用を期待している。現在、触媒の種類及び導入方法を検討中である。
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Research Products
(2 results)