2020 Fiscal Year Annual Research Report
A method to synthesize stakeholders' diversity for sustainable product-service system design
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20J12381
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
三竹 祐矢 東京都立大学, 大学院システムデザイン研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 製品サービスシステム / トランジションマネジメント / サービスデザイン / サービス工学 / ロードマップ / 共感 / 曖昧さ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は,持続可能社会実現に向けた高付加価値を実現する製品サービスシステム(Product-service system:PSS)の実装を実現するために,関与するステークホルダの多様性がその設計に与える影響を明らかにする多様性の綜合手法の開発である.令和2年度では以下の3項目に取り組んだ. (1)PSS の社会的目的の創出手法の構築:PSSを設計し,最終的に社会実装するためには,これまで主な設計対象とされていた製品・サービスの実現構造のみならず,社会的側面までを含めて考慮することが必要となる.上記に取り組むため,イノベーションの普及についての理論化やそのマネジメント方法を供するイノベーション研究であるTransition managementの知見を統合し,PSSの実装によって目指す社会的目的(ビジョン)とそれに至るまでのステークホルダの設計活動計画となるロードマップの開発方法を構築した. (2)創出した目的への共感状態の評価方法の構築:本研究においては,ステークホルダが創出した社会的目的に対して共感している状態を,目的が導出される背景や合理についての認識の齟齬が無い状態と定義した.その上で,初年度は,要求工学において議論されている要件抽出における曖昧さの定義や分類に関する知見を参考に,ステークホルダ間で交換される発話情報に含まれる曖昧さの特定手法を構築した. (3)ステークホルダの多様性とPSS デザインのメカニズム分析:構築したPSSの社会目的の創出方法の有効性を検証するため,2つのPSSデザイン事例(獣害対策用PSS,地域多世代コミュニケーション用PSS)に適用した.その結果,双方の事例において,本手法の適用可能性(構築手法が問題なく実践できるか)についてデザインに参画したステークホルダから高い評価を得ることができ,構築手法の有用性が検証された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度当初の計画において,同年度内に製品サービスシステム(PSS)の社会実装を加速する,社会的目的の創出手法と,PSSデザインにおけるステークホルダの共感状態の評価方法を整備することを達成目標として設定した.この当初計画に対して,上記の目標を達成するだけでなく,開発したPSSの社会的目的の創出手法を, 2つのPSSデザインの実事例に適用することにより,その有効性を検証した.さらに,開発した提案手法の有用性・適用可能性の検証に留まらず,2つの事例の結果を比較分析することにより,ステークホルダ特性とPSSデザインの関係性に関する洞察を獲得し,本研究の最終目的を達成する上で重要な成果を達成した.以上の結果から,令和2年度における研究は,当初の計画以上に進展したと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,共感状態評価のために開発した情報曖昧さ分析手法を,既存研究に倣い工学系の学生2名へのPSS要求抽出インタビューにより得られたデータに適用し,その共感状態の評価に試みた.しかしながら,策定した計画に基づく実際のPSSデザインプロセスでは,評価関数の不完全性や,デザイン知識の不足と不正確さなどに起因する様々な不確実性が発生するため,それらを試行錯誤により段階的に解消することを通してデザインは進行する.一方で,複数の主体が参画するPSSデザインにおいては,多様な主体がそれぞれで異なる経験,信念,知識,志向を有するためこの不確実性は増大する.すなわちより健全なPSSデザインを実現するためには,参画する各主体が誘発する不確実性の内実を明らかにすることにより,情報の健全性と合理性を高め,個人によるデザイン以上に不確実性の低減に努める必要がある.そのため令和3年度は,これまで扱った曖昧さを含む包括的な概念である不確実性を低減するPSSデザインのマネジメント手法の開発に取り組む.そして構築した手法を,複数主体でのPSSデザイン実験へ適用し,異なるチーム構成(被験者の人数や専門分野)のもと複数回行い,参加するステークホルダの特性と生じる不確実性の傾向の関係性について分析する.これにより,PSSデザインに参画するステークホルダの多様性がデザインに与える影響について考察する.
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