2020 Fiscal Year Annual Research Report
次世代暗黒物質直接探索実験とWIMP暗黒物質の理論的研究
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20J12392
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 素子 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 電弱相互作用 / 直接探索実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
「電弱相互作用する暗黒物質」に関して、繰り込み可能な模型の構築を行い、各種実験からの制限を調べた。暗黒物質に電弱相互作用を与え、かつ安定性を保証するには工夫が必要である。そのため、ゲージ相互作用の交換を課す機構を採用した。結果、電気的に中性で安定なベクトル粒子のスペクトルを実現し、暗黒物質模型を構築することに成功した。この模型の枠組みで暗黒物質のエネルギー密度に関する予言を引き出すには、電弱相互作用のみならずスカラー粒子との結合やベクトル粒子の存在も考慮する必要がある。この影響を取り込むために、ボルツマン方程式を数値的に解き、スカラー粒子の混合角をパラメータとして観測値と適合するパラメータ領域を明らかにした。この領域に関して、各種の暗黒物質探索実験の制限や、ベクトル粒子のコライダー探索の制限を調べた。さらに、ゲージ理論やヒッグス粒子の結合定数が摂動的に扱える条件を導出し、それによるパラメータ領域への制限を調べた。その結果、最終的に暗黒物質理論として適切に機能する領域が明確になった。具体的には、現在の宇宙における暗黒物質が100%説明されるためには、暗黒物質質量は3 TeV以上でないといけないことが明らかになった。さらに、スカラー粒子との結合が暗黒物質のエネルギー密度に対する予言に影響する場合、次世代の直接探索実験で探索可能であることが明らかになった。今後は、数 TeVの質量領域における暗黒物質対消滅過程に的を絞り、シグナル探索やエネルギー密度の再評価をおこなっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状で、模型構築・各種制限のスタディまで終えており、直接探索実験による探索可能性も明らかにできた。今後の方針も、対消滅過程に注目して進めていくことが決まっており、現在解析的な手法を習得中である。以上の理由により、現状では概ね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、暗黒物質対消滅過程に焦点を当てて対消滅シグナルやエネルギー密度の予言値を求める予定である。まず最優先では、ガンマ線の線スペクトル探索に焦点を当てて議論を進める。このためには、対消滅断面積の評価、およびその増幅因子の評価が重要である。効率的に解析を進めるために、まずはスピン1/2の理論に関して結果を導出して技術を習得し、その後スピン1の理論に適用する。これによって、さらに複雑なスピン1理論に対しても見通しよく解析を進める。
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