2020 Fiscal Year Annual Research Report
超高精度燃焼反応モデル実現に向けた可燃性冷媒の特異着火現象の解明
Project/Area Number |
20J12398
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 伸太郎 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 燃焼 / 冷媒 / フッ化炭化水素 / 詳細化学反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、前年度から引き続き可燃性冷媒の燃焼性解明に向けた研究に取り組んだ。これまでの可燃性冷媒の燃焼研究については熱機器に幅広く使用される複数の冷媒についてそれぞれ調べてきた。結果として、可燃性冷媒が従来の炭化水素燃料とは異なる、複数の反応領域を持つ特異な酸化過程を有することがわかっている。そこで今年度は、複数の冷媒成分を含む混合冷媒を対象に研究を行った。実験では、温度分布を制御した反応管を用いて、化学量論状態の混合冷媒/空気混合気における冷媒の混合比が着火および燃焼特性に及ぼす影響を調査した。反応管内で形成される火炎を使った反応性の評価から、特に可燃性冷媒分子内のフッ素と水素の比が、試料の反応性に及ぼす影響を明らかにし、冷媒の反応性を包括的に評価する指標を示した。このフッ素と水素の比を用いることで可燃性冷媒の反応性の傾向を整理して評価することが可能である。このような反応性の傾向は、火災安全の観点から可燃性冷媒の不要な着火を防ぐために有効であると考えられる。 その他にも令和2年度から、冷媒の燃焼性研究を発展させた、リチウムイオン電池の発火原因解明を図る研究を進めている。特に電解液溶媒の反応性に着目し、溶媒として広く利用されている炭酸エステルの気相における反応性を明らかにしつつある。反応管実験で取得した化学種分布データをもとに電解溶媒の気相反応の燃焼反応モデルを世界に先駆けて構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、これまで明らかにされていた単一冷媒の着火燃焼特性に加えて、混合状態の可燃性冷媒の燃焼性解明に向けた研究に取り組み、特に可燃性冷媒分子内のフッ素と水素の比が、試料の反応性に及ぼす影響を明らかにし、冷媒の反応性を包括的に評価する指標を示した。この結果は従来の冷媒燃焼性リスク評価の前提を覆すものであった。この研究は基礎燃焼学分野で最も権威ある国際学会International Symposium on Combustionに採択され、厳しい査読を経て国際学術誌Proceedings of the Combustion Institute (IF: 5.627)に筆頭著者として原著論文が公開されている。その他にも令和2年度から、冷媒の燃焼性研究を発展させた、リチウムイオン電池の発火原因解明を図る研究を進めている。特に電解液溶媒の反応性に着目し、溶媒として広く利用されている炭酸エステルの気相反応性を明らかにしつつある。反応管実験で取得した化学種分布データをもとに炭酸エチルメチルの気相反応の燃焼反応モデルを世界に先駆けて構築した。この研究結果については、現在、基礎燃焼学分野で最も権威ある国際学術誌Combustion and Flame(IF: 4.570)へ投稿準備中である。 以上より令和2年度は、おおむね順調な研究の進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまで反応管試験および反応管を模擬した計算において評価された可燃性冷媒の反応性の傾向を再評価する。これまで特に1300 K以下の比較的中・低温域で調査してきたが、一次元火炎を対象に2000 K付近まで温度領域を拡大して、着火燃焼特性を調査する予定である。また、令和2年度に引き続き、リチウムイオン電池の電解液に関しても調査を継続し、電解液にリチウム塩などの添加物を追加した場合の気相燃焼反応についてモデルを構築し、モデルの包括化を進める。
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