2020 Fiscal Year Annual Research Report
「教育的価値」言説の構築と展開に関する研究-小学校農業体験学習を事例として
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20J12427
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡邉 綾 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 農業体験学習 / 〈教育〉言説 / 教育実践の組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,日本の農業は衰退する一方で,学校教育で農業を体験・経験する農業体験学習は特に小学校で広く普及している。農業は就農人口が低下しており,小学生の将来的な就職可能性が低い,かつ学習指導要領上必修ではない。にもかかわらず,多くの小学校で実施されており,農業の教育的な価値は広く認められている。しかし,あるものが学校教育において価値が認められることは翻って,学校における教育内容の正統化が行われているということであり,その自明性が問われる必要がある。先行研究では教育言説研究において教育の正統性付与が問われてきた。本稿では,知識伝達の再文脈化に着目するBernstein(1990)の〈教育〉理論の観点を導入することで,農業が教育的によいか/否かではなく,どのように農業が教育的な価値があるものとして学校教育のなかで正統化されるかを検討しようとするものである。 本研究は,とくに教育政策-教師-教育実践を通じて,農業に正統性が付与されるプロセスをそれぞれ教育政策・制度レベル,教師レベル,教育実践のレベルの3つからとらえる。 2020年度は教育政策・制度レベル,教師レベルの2つについて調査執筆を行うことを予定していた。教育政策・制度レベルについては2019年度から継続してデータ収集,整理を行った。教師レベルについては,新型コロナウィルス感染拡大のため,フィールドワーク,インタビューなどが困難な場面もあったが,感染拡大予防に配慮しながらデータを収集するとともに論文執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大のため,調査研究の続行が難しく,中断措置をとった。中断以前,また研究再開に向けて以下のような作業を行った。 農業体験学習の資料収集:全国農村青少年教育振興会が過去に行った全国調査の報告書,日本農業教育学会の創刊号等,1960年代から1980年代の農業体験学習の支援組織について資料収集を行った。 農業体験学習のフィールドワーク:調査協力校の許可を得た上で,新型コロナウィルス感染拡大予防に配慮しながら,田植え,稲刈りの実習の参与観察,事後学習の授業観察を行った。 論文執筆:教師や参加する協力農業者がどのような規範のもとに農業体験学習の内容構成を行い,正統な教育実践として農業体験学習を実施しているかについて論文を執筆し,投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2021年度も国内での調査および学会での成果報告を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明なため、2021年度の研究の推進方針も多少の変更を余儀なくされた。今後は,調査協力者から同意を受けて収集したインタビューデータ,フィールドノーツを本格的に分析し,研究成果の論文化を進める予定である。現在,教育実践の組織化過程における正統性付与過程について現在論文執筆を進めている。
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