2020 Fiscal Year Annual Research Report
DAMPsを標的とした新規がん免疫療法創成の分子基盤の構築
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20J12432
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
衞藤 翔太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | DAMPs / 腫瘍 / CCL24 / Toll-like receptor / NF-κB / ネクローシス / イヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、死細胞から放出されるDAMPsを標的とした新規がん免疫療法創成の分子基盤の構築と当該分野の獣医療応用のため、①マウス細胞株を使用したがん細胞由来DAMPsの探索、②イヌ細胞株由来ネクローシス上清がマクロファージの遺伝子発現に与える影響、という2つの観点から研究を実施した。 ①に関しては、マウス大腸がん細胞株(SL4細胞)に凍結融解を繰り返すことでネクローシスを惹起させ、その上清をマクロファージに添加したところ、これまでDAMPsとの関連が報告されていなかったケモカイン、CCL24(Eotaxin-2)の発現を顕著に誘導することを見出した。このCCL24の発現誘導を指標に、液体クロマトグラフィーや酵素処理を組み合わせてDAMPsの同定を進め、CCL24を誘導するDAMPの本態が1-6 kDaのペプチドであることを見出した。さらに各種ノックアウトマウスから採取した腹腔マクロファージを用いた実験から、このDAMPはToll-like receptor(TLR)2-MyD88シグナルによって認識され、CCL24の発現を誘導することがわかった。またこれまでCCL24は腫瘍微小環境における役割は不明であったため、CCL24強制発現SL4細胞によるシンジェニックマウスモデルの解析を行なったところ、CCL24は腫瘍組織内に好酸球を強く浸潤させることを見出した。以上の結果から、DAMPs - CCL24 - 好酸球軸が腫瘍の病態に関与している可能性があると考えられた。さらに別途NF-κBレポーター細胞を作成し、NF-κBを強く活性化するDAMPsの同定を試みている。 ②に関しては、イヌ腫瘍細胞株由来のネクローシス上清をマクロファージ細胞株に添加した際の遺伝子発現をRNA-seqにより網羅的に解析し、イヌ細胞株由来DAMPsの免疫細胞への影響に関する基盤的なデータの取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マウス腫瘍細胞株を用いた新規DAMPsの探索と、イヌ腫瘍細胞株を用いた獣医療におけるDAMPsの基盤データの取得の2つの側面から研究を行った。 新規DAMPsの探索は、分子の同定までは至っていないものの、CCL24の発現を誘導するDAMPsのCharacterizationを進め、TLR2-MyD88によって認識されるペプチドであることを見出した。さらにNF-κBを強く活性化するDAMPsについても、レポーター細胞を作製し、液体クロマトグラフィーによって精製を試みている。 また当該分野の獣医療への応用を目指し、RNAseqによるイヌ細胞株由来DAMPsが免疫細胞における遺伝子発現に与える影響を網羅的に解析した。 以上のように、 マウス細胞株を使用した新規DAMPsの同定につながるデータやイヌ細胞株を使用したDAMPsに関する基盤的なデータを得ており、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
液体クロマトグラフィーによる精製と質量分析を組み合わせることで、CCL24の発現を誘導するDAMPsおよびNF-κBを強く活性化するDAMPsの同定を進める。新規DAMPsを同定することができれば、当該分子のノックアウト腫瘍細胞を作製し、生体内における役割や治療標的としての有用性について、マウスモデルを中心に解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)