2020 Fiscal Year Annual Research Report
すばる望遠鏡広視野観測から迫る宇宙初期における構造形成の解明
Project/Area Number |
20J12461
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 慧 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 大規模構造 / 原始銀河団 |
Outline of Annual Research Achievements |
既にすばる望遠鏡の大規模サーベイ観測Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program(HSC-SSP)から発見されていた宇宙年齢約20億年での原始銀河団サンプル179領域(Toshikawa et al. 2018)をもとに、その内部に存在するライマンブレイク銀河の静止系紫外光の光度関数を求め、一般的な銀河の光度関数と比較を行なった。結果、原始銀河団銀河は一般的な銀河に比べてより明るいことが明らかになった。これは宇宙初期ですでに環境効果が存在することを示し、高密度領域に存在する銀河は他の銀河に比べてより活発に星形成を行なっていることを示唆している。 また、上記のような原始銀河団探査は一般的な重い星形成銀河のみに限られており、それらから得られる結論がその他の銀河種族についても適用できるかは自明ではない。そのため、さまざまな銀河種族が同じような空間分布を示すのかについても調査を行なった。COSMOSと呼ばれる多波長の観測データがすでに存在する領域に着目し、多波長カタログから重い星形成銀河と重い星形成を終える途上にいる銀河、そして軽い星形成銀河と考えられているライマンアルファ輝線銀河を選択した。これらの天体を対象に相互相関関数を求め、そのシグナルをもとに異なる銀河種族同士が同じような環境に存在するか評価した結果、軽い星形成銀河は重い星形成銀河とは異なる空間分布を示すことを確認した。また、銀河の局所数密度を環境の指標として同様の議論を行なっても、同じ結果を得ることができた。今回の結果は、銀河の大規模構造を包括的に議論する上ではさまざまな銀河種族を実際に観測する必要性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、原始銀河団銀河の光度関数の導出を最遠方の宇宙年齢20億年という時代において初めて行うことができた。また加えて、異なる銀河種族の空間分布の違いを一般的な領域に注目して統計的な議論を行うことができた。これらの成果を元に1本の査読付き論文を出版し、1本の査読付き論文が受理された。したがって当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
光度関数による原始銀河団銀河の性質についての議論は、現在宇宙年齢約20億年という単一の時代にのみ限られている。HSC-SSPのデータは随時更新されており、今後は最新のデータを用いて他の時代での原始銀河団探査、及び内部の銀河の光度関数の導出を行う予定である。これらの拡大された原始銀河団サンプルと光度関数によって、原始銀河団とその内部の銀河の時代進化を追っていきたいと考えている。 また、現在までの複数の銀河種族の空間分布に関する議論により、異なる銀河種族での原始銀河団探査の必要性が明らかになった。これまで行ってきた星形成銀河での原始銀河団探査だけでなく、星形成を終えたような銀河での原始銀河団探査も行っていきたいと考えている。
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Research Products
(7 results)