2020 Fiscal Year Annual Research Report
超分子化学に基づくTriplet-DNPのバイオ系への展開
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20J12469
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川嶋 優介 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 三重項 / 核偏極 / NMR / Triplet-DNP / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
NMR(核磁気共鳴)シグナルの増感は、MRIによる生体イメージングや多次元NMR分光法を用いたタンパク質の分析などバイオ系の分野への応用が期待されているが、従来の増感方法では液体ヘリウム温度以下の極低温を必要とすることからコストや応用面に大きな問題を抱えていた。一方で、光励起三重項状態を用いた動的核偏極(Triplet-DNP)では、温度によらずNMRシグナルの増感が可能であることから近年注目を集めている。現状のTriplet-DNP分野では偏極源(NMR増感剤)となりうる分子骨格がアセン系に限られていたため生体親和性に問題があり、生体応用へ展開していく上で大きな障害となっていた。更に、増感対象となる分子に関しても大きく制限があった。本手法の応用を考えた際に、実用上は固体中でNMRシグナルを増感した後でタンパク質との相互作用を観測するために水に溶解させる必要があるものの、系中の分子の結晶構造の違いやマトリックスの水溶性の問題から水溶液中で観測可能な分子は限られていた。 本年度は、高い生体親和性を有する新たな偏極源の開発と、水溶性マトリックスの開発に取り組んだ。偏極源の開発において、採用者は生体分子であるポルフィリン骨格に着目し、テトラフェニルポルフィリン誘導体を用いた生体分子の偏極に携わった。Triplet-DNPを実際に行う場となるマトリックスの開発では、Triplet-DNPのマトリックス偏極を蓄積・保持可能な時間の目安であるスピン-格子緩和時間(T1)が長く、加えて溶液NMRに応用するために水溶性をもったマトリックスを開発した。このマトリックスは非晶質であるため従来用いられてきたアセン系の偏極源の他、採用者が開発に携わったポルフィリン骨格など多様な偏極源を導入可能であり、実際にTriplet-DNPを行ったところ、NMRシグナルの増大が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は水や生体分子、薬剤分子などの生体内プローブとなりうる分子の高偏極化を目的とした材料開発を行なった。具体的な研究内容として高い生体親和性を有する新たな偏極源の開発と、水溶性ガラスマトリックスの開発に取り組んだ。 偏極源の開発において、生体分子であるポルフィリンを母骨格とした種々の偏極源の開発に携わり、Triplet-DNPを生体分野に応用する上での障壁となっていた材料の生体親和性という課題を解決することに成功した。 マトリックスの開発では、偏極対象となる薬剤や生体分子等様々な分子を導入可能なガラス構造を有する水溶性のマトリックスを探索し、偏極を蓄積・保持可能な時間の目安であるスピン-格子緩和時間(T1)が十分長いマトリックスを開発することに成功した。さらに、このマトリックス中においてTriplet-DNPを実施し、NMRシグナルの増大を確認している。 以上からTriplet-DNPのバイオ系への応用に向けて当初の予定以上に研究が進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、水や生体分子、薬剤分子などの生体内プローブとなりうる分子の高偏極化を目的とした材料開発及びTriplet-DNP実験を行う予定である。具体的には本年度開発した偏極源や水溶性ガラスマトリックスを利用し、種々の薬剤や生体分子、水分子等の高偏極化を目指す。初めに種々の偏極源分子をマトリックス中に導入してそのTriplet-DNP特性を所属機関が保有する設備を用いて評価することで偏極源同士の性能を比較し最適化を行う。並行してマトリックスの分子構造の最適化や重水素化処理、精製処理などを用いてNMR増感状態を保持できる時間の目安であるスピン-格子緩和時間を伸ばし、さらなるTriplet-DNP性能の向上を行う予定である。さらにマトリックス中に偏極源に加えて薬剤や生体分子などの偏極対象分子を導入し、これらの偏極対象のTriplet-DNP特性を評価する。更に、所属機関の保有する設備の溶液NMR測定に向けた改良に携わり、高偏極化した種々の偏極対象分子に関して、その溶液中における挙動を分析し、Triplet-DNPを用いた生体内NMRプローブの実現に向けて研究を推進していく予定である。
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Research Products
(3 results)