2020 Fiscal Year Annual Research Report
機械学習と半教師あり学習を用いた数値計算手法の開発
Project/Area Number |
20J12472
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
椎名 拳太 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | シュレーディンガー方程式 / ニューラルネットワーク / スピン系 / 相転移 / 超解像 / 機械学習 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、機械学習および深層学習を用いた新規な数値研究手法の探索的な開発である。その一旦として、ハミルトニアンが非摂動項と摂動項をもつ系において、そのシュレーディンガー方程式を効率的に解く手法を開発した。この手法では、摂動論を用いて教師データを用意することで、半教師あり学習による深層学習モデルの最適化を行った。こうすることで、正確な解を用意しなければならない教師あり学習とは違い、摂動項だけが近似的に求まる系に対しても適用が可能となる。数値計算では、学習データに含まれない摂動ポテンシャルに対しても、その解を効率的に予測できるモデルを構築できることを示した。 上記の研究に加えて、「深層学習モデルを用いた相関状態の超解像」に着目した研究を実施した。先行研究において、2次元格子上のスピン状態を深層学習による超解像技術を用いて生成する手法が提案されていた。そこでは、小さな格子状のスピン状態をより大きなものに変換することに成功したが、手法の適応がイジングスピン系に限られていた。本研究では、より一般的なモデルであるPottsモデルに手法を拡張するため、長距離スピン相関を基に計算される相関状態に対する超解像を提案した。また、高温でもその精度を維持するために、improved estimator を用いた相関の計算とそれに伴う相関状態の繰り込み変換である block-cluster transformation を同時に提案した。これにより、より一般的なモデルであるPottsモデルにおいて、広範囲の温度領域での超解像を可能にした。とくに、3状態Pottsモデルでの数値計算を行い、熱的なノイズにより超解像が難しい高温領域でもその精度が保たれることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた海外研究期間での滞在研究等は、COVID-19の影響でやむなく中止した。ただし、それ以外は目的に沿った研究が順調に進んでいる。当初の計画では、半教師あり学習によるシュレーディンガー方程式の解法が主な研究内容であった。しかし、手法の開発が順調に進んだことと、研究費で購入したGPUワークステーションの高効率な計算が実施できたことを理由に、予定より早く研究が進んだ。そのため、さらなる研究としてスピン系における深層学習を用いた数値計算手法の開発に取り組んだ。海外の研究者とも積極的に交流し、最先端の深層学習の知見を取り入れながら手法の開発を行った。また、PytorchやTensorFlowなど、深層学習のオープンソフトウェアを用いることで、シミュレーションコードの作成も効率的に行うことができた。こちらの研究でも、研究費で購入したGPUワークステーションを用いて、大きな計算資源が求められる深層学習の計算を実行した。 今年度行ったこれらの研究は、どちらもその成果を論文にまとめ論文誌へ投稿した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析は順調であり、予定していた研究計画は概ね完了している。そのため、ここまでの研究で得られた知見を用いて、さらなる研究を行っていく予定である。ただしその方向性は「機械学習および深層学習を用いた新規な数値研究手法の探索的な開発」に限り、令和4年度には研究が終了するように計画を立てていく。 これまでの研究により、スピン系における数値計算ではスピン状態を一枚の画像とみなすことで、種々の深層学習手法が応用でき、新規手法開発の潜在可能性が大きいことが分かった。とくに、従来の中心的な数値計算手法であるマルコフ連鎖モンテカルロ法で問題となるCritical slowing down の解決は興味深い研究対象になり得る。そこで次年度は、今年度行ったスピン状態の超解像の研究を拡張し、深層生成モデルによるスピン状態の超解像に注目する。深層生成モデルを応用することで、Critical slowing downが問題となる系でも、効率的にその性質を探索できる可能性がある。 計算手法の効率化を十分に行った後、スケールのより大きく、性質が未知な系に開発した手法を適用していくが、そのためにはさらなる計算資源が必要になると考えられる。そこで、研究費によるGPUの増設を予定している。GPU購入の費用はCOVID-19により中止した海外出張の費用を充てる計画である。
|