2020 Fiscal Year Annual Research Report
サンクコスト効果の発生メカニズムの解明:理論と実験と応用
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20J12595
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川中 大士朗 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 行動経済学 / ゲーム理論 / 意思決定理論 / 実験経済学 / 応用ミクロ経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題はサンクコスト効果が発生するメカニズムを解明することを目的としており、具体的には3つの部分に分けられる。 第1の部分は理論研究であり、意思決定理論やゲーム理論といった理論経済学の枠組みに基づいてサンクコスト効果の発生を説明するモデルを構築した。意思決定理論に関する研究としては、Gul and Pesendorfer (2001) といった標準的な理論に基づいた公理化モデルによってサンクコスト効果を説明できることが明らかとなった。またゲーム理論に関する研究としては、行動経済学的なバイアスを仮定しなくても情報構造次第ではサンクコスト効果が発生することを示唆する結果を得ることができた。これらの成果については学術雑誌に投稿するための準備を進めている。 第2の部分は実験研究であり、先述の理論モデルの妥当性を被験者実験によって検証する。令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大もあって実験研究については期待通り進捗できなかったものの、理論的な研究結果に基づいた実験デザインを検討し、さらに海外の研究者とオンライン面談を行うなどして実験計画が進めることができた。 第3の部分は応用研究である。先述のサンクコスト効果の理論モデルをベルトランゲームと呼ばれる標準的な市場モデルに応用することによって、従来のモデルでは説明できない市場均衡を説明することができた。この均衡では企業が価格競争をしているのにもかかわらず正の利潤を得ることが可能であり、それによって経済厚生が悪化していることが示唆されており、この結果は消費者保護政策にとって重要な含意があると考えられる。この成果についても学術雑誌に投稿するための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大により実験研究や研究発表については期待通り進捗できなかったものの、理論研究を中心とした一定の進捗があり、本研究課題は総合的にはおおむね順調に進展している。 まず基礎研究については、本研究課題の主題であるサンクコスト効果に関連する複数の表現定理が得ることができた。この理論的結果は応用分析において適切なモデルと組み立てたり実験研究において適切な実験設計をする上で重要であると考えられる。応用分析については、サンクコスト効果のモデルをベルトランゲームに応用する理論研究が進捗することができた。これらの成果については学術雑誌に投稿するための準備が行われている。実験研究については、理論的成果に基づいて実験計画を進めるとともに、海外の研究者とオンライン面談を行うなどして研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究については、令和2年度までに得られた結果の一般化を進めて論文としてまとめ、学会や研究会などでの報告を行い、令和3年度中に学術雑誌への投稿を行うことを目標とする。応用研究についても理論研究と同様に論文としてまとめて、令和3年度中に学術雑誌への投稿を行うことを目指す。実験研究については、前年度までに得られた公理化モデルに基づいて適切な実験のデザインを行い、大阪大学社会経済研究所において被験者実験を実施する。
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