2020 Fiscal Year Annual Research Report
職場における感謝法プログラムの開発とその効果検討: クラスター無作為化比較試験
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20J12721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
駒瀬 優 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 産業精神保健 / ワーク・エンゲイジメント / 感謝 / ポジティブ心理学 / メンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
「労働者が感謝の気持ちを持つこと、他者に感謝の気持ちを伝えることが、労働者のみならず、企業にとっても重要である」という研究仮説を検証するために、複数の研究デザインからエビデンスを発信することを目的としている。令和2年度の取り組みとして、具体的には6つの研究計画を立案していた (① 日本語版職場感謝尺度の開発、② 労働者を対象にした感謝法の、メンタルヘルスにおける効果についての系統的レビュー、③ 改善版感謝法プログラムの開発、④ 研究課題に関するプロトコル論文の投稿、⑤ 研究課題に関する予備的介入の実施、および⑥ クラスター無作為化比較試験における介入群への介入)。それぞれの研究実績の概要は下記の通りである。
①について、研究を完了し、査読付き学術英文雑誌に論文が受理されている。開発された日本語版職場感謝尺度は十分な信頼性・妥当性が確認されており、ワーク・エンゲイジメントとは中程度の相関が確認された。②について、必要な文献検索を完了し、論文投稿に向けて執筆作業を行っている。最終的に9編の論文が組入れられ、労働者を対象とした感謝法がメンタルヘルスの向上に効果的である可能性が確認された。③について、産業精神保健の専門家、感謝法の専門家からの意見を聞きながら、プログラムの開発を完了している。④について、研究を完了し、査読付き学術英文雑誌に論文が受理されている。⑤について、1職場28名の労働者に予備的介入を実施している。⑥について、自身で研究リクルートを行い (70職場1250名)、介入群となった職場の労働者に介入を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自身の研究課題「職場における感謝法プログラムの開発とその効果検討」における目標は2つある。1つ目は、労働者のワーク・エンゲイジメントの向上が期待される感謝法プログラムを開発すること。2つ目は、ワーク・エンゲイジメントにおける感謝法プログラムの効果評価である。ワーク・エンゲイジメントとは、活力・熱意・没頭によって、特徴づけられる労働者のポジティブな心理状態であり、労働者の心身の健康、Well-being、仕事のパフォーマンスとの正の関連が、燃え尽き症候群、離職意図との負の関連が報告されている。そのため、労働者のワーク・エンゲイジメントを向上させることは、労働者と企業の双方にとって重要な課題である。 ワーク・エンゲイジメントの向上が期待される感謝法プログラムの開発については、以下3つのプロセスを経て開発を行った。① ワーク・エンゲイジメントへの感謝法の効果を検討した先行研究を基に、最新の感謝法研究の知見を反映させ、産業精神保健の専門家との議論を経て第1版感謝法プログラムを開発した。② 次に、感謝法についての専門家である筑波大学の5名の先生からヒアリングを行い、第2版感謝法プログラムを開発した。③ 最後に、1職場28名の労働者を対象に第2版感謝法プログラムを提供し、得られた意見を反映させて最終版感謝法プログラムを開発した。 ワーク・エンゲイジメントにおける感謝法プログラムの効果評価については、すでに目標サンプルの95%にあたる1250名 (70職場) の研究参加が確定しており、先発群に割振られた職場とその従業員に対して現在プログラムの提供を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度 (令和2年度) は、6つの研究を実施した (① 日本語版職場感謝尺度の開発、② 労働者を対象にした感謝法の、メンタルヘルスにおける効果についての系統的レビューの実施、③ 改善版感謝法プログラムの開発、④ 予備的介入の実施、⑤ 感謝法プログラムのクラスター無作為化武佐比較試験についてのプロトコル論文の作成、および⑥ 無作為比較試験における介入群へのプログラム提供)。本年度 (令和3年度) も一貫して職場における感謝をテーマに、下記4つの研究を実施する。 A. 職場で、他者から感謝をされることと、ワーク・エンゲイジメント (以下WE) との関連についての横断研究: 他者に対しての感謝の研究は多く行われているが、他者からの感謝についての研究は限定的であるため、職場で特に重要なアウトカムであるWEとの関連について検討する (~令和3年6月)。 B. 労働者を対象にした感謝法の、メンタルヘルスにおける効果についての系統的レビュー: 昨年度研究の続きとして実施。労働者を対象とした感謝法研究について質的に統合した引用可能な文献は存在しないため、論文執筆し、受理を目指す (~令和3年7月)。 C. 日本語版職場感謝尺度の予測的妥当性についての検討: 昨年度開発された職場感謝尺度が、1年後に関連する概念とどのように関連を持つかについては不明である。そこで、1年後のWE等との関連について縦断的に関連を検討する (~令和3年8月)。 D. 職場における感謝法プログラムの効果検討: 昨年度研究の続きとして実施。開発された感謝法プログラムが日本人労働者のWE向上に有効などうかをクラスター無作為化比較試験デザインを用いて検討する。令和3年4月時点で、72職場、1250人の労働者が組入れられている。全データは令和3年10月には収集され、年度内に解析・評価・論文投稿を実施する (~令和4年3月)。
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Research Products
(6 results)