2020 Fiscal Year Annual Research Report
ハイドロゲルのナノ構造/機能相関の解明と超高速刺激応答ゲルの創製
Project/Area Number |
20J12727
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西澤 佑一朗 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ミクロゲル / ハイドロゲル / 原子間力顕微鏡 / ラジカル重合 / 反応性比 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速応答する微粒子集積化ゲルを作成するうえで、ゲル微粒子内部の架橋構造の制御が重要である。今年度はゲル微粒子の架橋構造制御に向け、(1)沈殿重合法のメカニズム、(2)化学種がゲル微粒子のナノ構造に与える影響について調査した。 (1)主モノマーにN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)、架橋剤にN,N'-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を選択し、沈殿重合の進行に伴い形成・成長するゲル微粒子の温度応答性とナノ構造変化を、光散乱法および高速原子間力顕微鏡(高速AFM)により評価した。特に高速AFMによる観察から、重合初期においてゲル微粒子の内部に架橋剤が多量導入された球状の非温度応答性ドメイン構造が複数形成することを明らかとした。また、モノマーと架橋剤の組成比を常に一定に保つFeed沈殿重合法を活用する事で、不均一な架橋密度分布を解消できることを見出した。 (2)上述の様に、沈殿重合では主モノマーと架橋剤の反応性比がゲル微粒子の構造を決定する因子の一つである。そこで、NIPAmよりもBISとの反応性比が近いN-イソプロピルメタクリルアミドを用いて沈殿重合を実施し、反応性比がゲル微粒子のナノ構造に与える影響を調査した。静的光散乱法および高速AFMによる構造評価の結果、poly(NIPMAm)ゲル微粒子の方がより均一な架橋構造を有することが明らかとなり、実際に反応性比の違いを活用してゲル微粒子の架橋構造制御を達成した。ただし、poly(NIPMAm)ゲル微粒子内部には(1)でも見られた非温度応答性ドメイン構造が形成する事から、不均一なドメイン構造は、ポリマー鎖が凝集しながら進行する沈殿重合のメカニズムに由来するものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は主に、沈殿重合法の重合機構とモノマー/架橋剤間の反応性比の違いを活用して温度応答性ゲル微粒子の構造を制御し、得られたゲル微粒子のナノ構造を明確化する事を目指し、研究を実施した。光散乱法と高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を活用し、沈殿重合の進行に伴うゲル微粒子のナノ構造・温度応答挙動の変化を評価したところ、反応性比の影響により重合初期に形成した高分子鎖に架橋剤が多く導入され、ゲル微粒子中心部の温度応答性の低下や、非温度応答性ドメインが形成することを明らかにした。また、モノマーと架橋剤の組成比を常に一定に保てるFeed沈殿重合を活用する事で、同組成であってもより均一な架橋密度分布を有するゲル微粒子が得られることを明らかにした。更に、架橋剤との反応性比が異なる2種のモノマーを用い、沈殿重合により合成したゲル微粒子のナノ構造を比較する事で、モノマーと架橋剤の反応性比が近い条件ではより均一な架橋密度を有するゲル微粒子が得られることを明らかとした。以上を踏まえ、当該年度において、研究テーマはおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①架橋剤の種類がゲル微粒子のナノ構造に与える影響の調査 前年度の研究により確立した、比較的均一な架橋密度分布を有するゲル微粒子を合成可能なFeed沈殿重合法を活用し、化学種の異なる架橋剤をゲル微粒子内部の狙った位置に導入する。 ②単一ゲル微粒子の力学特性評価 高速AFMを用いたフォースカーブを活用し、架橋剤の種類や分布がゲル微粒子の力学特性に与える影響を明確化する。そして、微粒子集積化ゲルが高速刺激応答する際に構造を維持するために十分な力学強度を有したゲル微粒子の架橋構造を見極める。 ③高速刺激応答ゲルの実現 上記②で最適化したゲル微粒子を集積化し、壊れることなく高速で刺激に応答するハイドロゲルを創製する。
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