2020 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞による二次リンパ組織の恒常性維持の分子基盤に関する研究
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20J12857
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小森 里美 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 細網線維芽細胞 / リンパ節 / CD47 / SIRPα |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、骨髄移植後のリンパ節再構築におけるストローマ細胞上のCD47と樹状細胞上のSIRPαとの相互作用の寄与を明らかとすることを目的として、主に遺伝子組み換えマウスを用いた解析を行っている。本年度はリンパ組織に存在するストローマ細胞のうち、特に細網線維芽細胞(FRC)上に発現するCD47に着目した研究を行った。骨髄移植なし、つまり定常状態でのFRC上のCD47の発現がFRC自身の恒常性制御に関与しているのかを明らかにするため、FRC特異的CD47欠損マウス(CD47ΔFRCマウス)のリンパ節FRCにおけるBrdUの取り込みを確認した。その結果、CD47を欠損したFRCでは定常状態でのターンオーバーには異常が見られない傾向にあった。一方で、CD47を欠損したFRCでは野生型マウスFRCと比較して血球細胞の誘引に重要な因子であるケモカインの発現減少が認められた。つまり、定常状態においてFRC上のCD47はFRCのターンオーバーの制御には大きく関与していない一方で、FRCの機能に関与している可能性が示唆された。さらに骨髄移植前のCD47ΔFRCマウスではリンパ節における血球細胞数並びに比率に関して異常が認められなかった。そのため、FRC上のCD47は骨髄移植後のリンパ節再構築という特定の状況下におけるFRCの機能に重要であることが示唆された。また、ストローマ細胞側だけでなく樹状細胞側の寄与についても検討を行っている。樹状細胞上のSIRPαが樹状細胞の恒常性をどのように制御するのかを明らかにするため、タモキシフェン投与によりSIRPαを全身性に欠損させることが可能なマウスを用いて解析を行っている。現在はSIRPαを欠損させた直後の樹状細胞を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行っており、SIRPαからのシグナルにより制御されるシグナル経路並びに標的分子群の候補について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、ストローマ細胞特異的CD47欠損マウスを用いた解析から、ストローマ細胞の中でも特に細網線維芽細胞(FRC)と呼ばれる細胞集団に発現するCD47がFRC自身の機能において重要であることについての解析が順調に進んだ。さらにFRCだけでなくその相手側細胞として考えている樹状細胞についても解析中であることから、本研究課題は概ね順調に進みつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度ではCD47を欠損したFRCの機能異常について、ケモカイン産生のみならず他のサイトカイン産生や細胞内シグナルの変動を網羅的な遺伝子発現解析によって明らかにすることを計画している。また、SIRPαを欠損させた樹状細胞での遺伝子発現解析並びに分子学的な解析によって、SIRPαからのシグナルが制御するシグナル経路並びに標的分子を明らかにする。さらに骨髄移植後のマウスにおける自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の解析を行い、リンパ組織再構築後の免疫応答におけるストローマ細胞上のCD47と樹状細胞上のSIRPαの相互作用の重要性について検討を行う。以上の研究をまとめることによって、ストローマ細胞上のCD47によるストローマ細胞の機能制御機構並びにSIRPαによる樹状細胞の恒常性制御機構、さらにリンパ組織再構築時や再構築後の免疫応答におけるストローマ細胞-樹状細胞間相互作用の寄与について明らかにする。
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Research Products
(4 results)