2020 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of Cdx2 expression in mouse trophectoderm during implantation
Project/Area Number |
20J12906
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
鈴木 大介 東京農業大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2) (80988254)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 栄養外胚葉 / CDX2 / mural TE / 着床 / 子宮内因子 / 胚盤胞 / RNA-seq / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス胚盤胞は壁栄養外胚葉(mural TE)が分化することで子宮への接着・浸潤能を獲得し、着床が進行するが、mural TEの分化を制御する分子機構については不明点が多い。研究代表者は以前、着床進行(E3.5~4.5)に伴ってTEの未分化維持に関わる遺伝子Cdx2の発現がmural TEで低下していくことを明らかにした。そこで、本研究では着床進行に伴うmural TEでのCdx2発現低下を引き起こす分子機構の解明を目的とした。令和2年度は初めにCdx2発現低下を誘導することができるin vitro培養系の構築を目指した。その結果、KSOM培地でE3.5胚盤胞を培養してもCDX2発現に影響は見られないものの、ウシ胎仔血清(FBS)を添加したKSOM培地で培養することでmural TEのCDX2発現が低下することがわかった。これは、hanging drop法により接着フリーで培養した場合にも同様であった。したがって、mural TEでのCdx2発現低下は外的因子により他律的に制御されると考えられた。着床開始時の子宮は卵巣由来エストロゲンに応答して様々な因子を分泌し、胚盤胞の着床を誘起する。そこで、エストロゲン受容体阻害剤ICI 182,780を投与した妊娠マウスから回収したE4.5胚盤胞を用いてCDX2の免疫染色を行ったところ、mural TEでのCDX2発現低下が抑制されることが確認された。以上のことから、着床進行に伴うmural TEでのCdx2発現低下は卵巣由来エストロゲン依存的に分泌される子宮内因子により誘導されると考えられた。 さらに、令和2年度はE3.5, 4.0, 4.5のmural TEのRNA-seq解析を実施したが、着床進行に伴った未分化/分化関連遺伝子の発現変化を捉えるとともに、細胞接着や代謝に関連する多数の発現変動遺伝子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画時にはpolar, mural TE間の遺伝子発現プロファイルを比較するために、Cdx2蛍光マウスを用いてシングルセル解析を実施する予定であった。しかし、コロナウイルス流行により研究活動時間が制限されたため、より短期間での研究目標達成を目指し、野生型マウスからmural TEのみをサンプリングしてRNA-seq解析を実施した。その結果、着床進行に伴うmural TEのダイナミックな遺伝子発現変化を捉えることができた。しかし、E3.5~4.5と短期間であるにも関わらず、当時想定していたよりも多数かつ様々な遺伝子が発現変動遺伝子として同定されたため、mural TEでのCdx2発現低下を誘導しうる上流シグナル経路の絞り込みができていない。したがって、研究の達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初めに、令和2年度に引き続きバイオインフォマティクス的手法により候補シグナル経路の絞り込みを行う。特定された候補シグナル経路の活性状態がmural TEでのCdx2発現に相関して変化するかを解析するために、着床前及び着床期胚盤胞を用いて候補シグナル経路のコアタンパク質のリン酸化レベルなどを蛍光免疫染色により解析する。さらに、候補シグナル経路が実際にmural TEでのCdx2発現低下を制御しているかを明らかにするため、その標的シグナル経路のリガンドや阻害剤を添加した培地で着床前胚を培養し、Cdx2発現への影響を解析する。Cdx2発現低下を制御するシグナル経路が特定された場合、その上流因子となりうる子宮内因子の同定を目指し、候補因子を添加した培地でE3.5胚盤胞を培養した後、mural TEでのCDX2発現低下が見られるかを免疫染色により解析する。加えて、実際にその候補因子が着床期の子宮に存在するかを解析するために、子宮組織を用いて免疫染色やin situ hybridizationを実施する予定である。 また、着床進行のためのmural TEでのCdx2発現低下の意義を詳細に理解するために、レンチウイルスを用いてTE特異的にCdx2を過剰発現させた胚盤胞の子宮移植を行う。初めに、シカゴスカイブルーの投与によりCdx2過剰発現胚の着床能を評価する。着床が阻害された場合は、移植したCdx2過剰発現胚をE4.5で回収し、mural TEの遺伝子発現解析を行う。細胞接着関連遺伝子などRNA-seqにより明らかとなった着床進行に伴い発現変動する遺伝子についてCdx2過剰発現による影響を解析することで、着床過程におけるmural TEの様々な性質変化の中で、Cdx2が制御する部分を明らかにする。
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