2021 Fiscal Year Annual Research Report
Transformation of the Japanese representation style through Georges Bigot's artworks (1899-1927)
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20J12928
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
上田 あゆみ 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ジョルジュ・ビゴー / 日本表象作品の受容 / 植民地省画家 / 黄禍 / 「親しみやすさ」の描写 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス人画家ジョルジュ・ビゴー(1860-1927)が約17年の日本滞在を経て帰国した後に制作した日本表象作品における描写様式の傾向を明らかにし、世紀転換期フランスの日本表象史の文脈に彼の創作を位置づけることを目的としている。 これに沿い、令和三年度は前年度に明らかにしたビゴーの日本表象様式の特質が、20世紀初頭の植民地主義や黄禍主義にみるフランスの対日世論の影響を受けているかどうかを検証した。当初は、現地の古文書館にて歴史的背景を裏付ける一次史料の収集や、令和二年度の繰り越し分の科研費を使用して、『ル・ミディ・コロニアル』紙の日本のイメージをマルセイユのブーシュ・デュ・ローヌ公文書館・図書館にて収集した上での検証を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染者の再拡大により遂行が困難になってしまった。日本で実施可能な調査として、ビゴーの植民地省画家の肩書に着目し、これを自称した1905年以降に制作された旅行記の挿絵とエピナル版画に焦点を当て、その中の日本描写様式の表出を確認した。また、これらの作品を、黄禍を表した風刺画や新聞記事にみる日本への評価と照合し画家の制作意図と当時のフランスでの受容を考察した。 その結果、ビゴーの帰国後の作品に描かれた日本には画家独自の手法である「親しみやすさ」の描写が表出している点が明らかになった。また、この描写が、受容側の見方次第では日本を脅威として、黄禍論を助長するものと捉えられた可能性も新たに指摘した。ビゴーは植民地省画家を名乗る中で日本を描く媒体を常に探求し、画家独自の「親しみやすい日本」のイメージの創出を試みた。そのため、画家が表現したい日本のイメージと、それを受容する側が理解する日本のイメージとの差異は不本意であったと予想される。ビゴーが帰国後に描いた日本表象作品には、世間の見方に対する画家の葛藤を読み取ることができる。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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