2020 Fiscal Year Annual Research Report
呼気癌マーカー複数同時検出のための酵素電気化学センサアレイの開発
Project/Area Number |
20J12942
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐々木 開 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 酵素 / 電気化学 / 癌マーカー / センサー / カスケード反応 / 膜構造 / ハイドロゲル / 気相検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、センサー電極上の酵素膜構造とセンサー性能の関係性の解明を目指して研究を行い、その成果を国内学会発表1件(口頭)および査読付き英語論文1報にて発表した。 本研究では、複数の酵素反応を連立させることで、様々な癌マーカーに対応可能なセンシング表面の設計・開発を行っている。しかし、一般的に複数の酵素反応を連立させた場合、酵素間での中間体の損失により検出感度の低下が懸念されるため、電極上の酵素膜構造を工夫する必要がある。本研究では、(a) 酵素同士が均一に混合され反応中間体の拡散距離が短い混合膜電極、(b) カスケード反応順に酵素がレイヤー状に積層された順積層膜電極、および(c) 反応の逆順に積層された逆積層膜電極を用いて、モデル検出対象であるアンモニアの検出感度を比較した。また、検出メカニズムにおける各中間反応ステップの変換効率を比較するため、各電極へ中間体であるL-グルタミン酸および過酸化水素を添加し、電位応答の比較を行った。その結果、(b) 順積層膜電極によるセンサーの検出感度向上と、従来の酵素-電気化学バイオセンサーの問題点であった酵素間での中間体損失がほとんどない膜構造を開発することができた。この発見は、2020年度バイオ・高分子シンポジウムにて発表され、その後ACS Omegaに掲載された。 また【1】気化分子検出のためのハイドロゲル膜の調製に関して、親水性ポリマーを用いてハイドロゲル膜を調製した。【2】ハイドロゲル膜を用いた酵素-電気化学センサーによる呼気癌マーカーの検出技術の確立に関して、作製したハイドロゲルを用いた酵素-電気化学センサーの評価システムの設計および開発を行った。作製した装置にてアンモニアの検出を行なった。さらに、【3】センサーアレイ化による複数の呼気癌マーカーの同時検出に関して、水中でのアルコールやエステルの検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、【1】気化分子検出のためのハイドロゲル膜の調製、および【2】ハイドロゲル膜を用いた酵素-電気化学センサーによる呼気癌マーカーの検出技術の確立、を予定していた。【1】気化分子検出のためのハイドロゲル膜の調製に関して、いくつかの親水性ポリマーを用いてハイドロゲル膜を調製した。その過程で、新規の親水性ポリマーを調製するために他研究室で実験実習を行った。また、【2】ハイドロゲル膜を用いた酵素-電気化学センサーによる呼気癌マーカーの検出技術の確立に関して、作製した酵素-電気化学センサーの性能を従来のガスセンサーと比較するため、評価システムの設計および開発を行った。ハイドロゲルを用いて酵素-電気化学センサーの電極表面を被覆し、呼気癌マーカーの検出を行なった。再現性のあるデータを取得するため、評価装置およびハイドロゲル膜の改良、検出メカニズムにおける律速段階の解明などの検討が必要であるが、概ね順調に進んでいると考える。また、今年度は予定していなかった【3】センサーアレイ化による複数の呼気癌マーカーの同時検出に関して、基礎実験を行い、検出メカニズム通りにアルコールやエステルの検出に成功できたことは非常に良い結果であった。来年度はより詳細な検討を重ねていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】気化分子検出のためのハイドロゲル膜の調製に関して、引き続き様々な親水性ポリマーを用いてハイドロゲルを調製し、酵素活性を長期的に維持可能な膜の開発を行う。また親水性ポリマーの有力候補として、細胞表面のリン脂質と類似の構造を側鎖に有するホスホリルコリンポリマーを申請者本人が重合し、ハイドロゲル膜を調製する予定である。 また、【2】ハイドロゲル膜を用いた酵素-電気化学センサーによる呼気癌マーカーの検出技術の確立に関して、再現性のあるデータを取得するために、評価装置およびハイドロゲル膜の改良、検出メカニズムにおける律速段階の解明などの検討を行う予定である。 さらに今年度からは、【3】センサーアレイ化による複数の呼気癌マーカーの同時検出を実施する予定である。既に基礎研究を始めており、今後は高感度化に向けた酵素量や固定化方法の最適化を行う予定である。また他の酵素の組み合わせとして、アルデヒドを検出可能な酵素反応を検討する予定である。 また、得られた実験結果を適宜まとめ、学術誌への論文投稿や学会等で発表を行う予定である。
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