2020 Fiscal Year Annual Research Report
成体脳神経幹細胞の繊毛が側脳室の恒常性維持に寄与するメカニズムとその生理学的意義
Project/Area Number |
20J12966
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堤 崚太郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 繊毛 / 繊毛病 / 神経幹細胞 / ゲノム編集技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊毛は細胞の表面に突き出た、微小管を軸とする細胞小器官であり、進化的に幅広く保存されている。ヒトにおける繊毛の機能不全は重篤な発生異常を含む「繊毛病」と呼ばれる一群の疾患を引き起こすが、繊毛病に対する根本的な治療法はまだ確立されてない。 水頭症や網膜色素変性症を含む繊毛病の発症・病態メカニズムを明らかにするために、マウスの胚全体・網膜組織を用いて繊毛病原因キナーゼIntestinal cell kinase (Ick)と相互作用する分子のスクリーニングを試みた。このスクリーニングにより、申請者はIckの相互作用候補因子として、繊毛病原因遺伝子であるIck-interacting protein (Icip)を見出した。Icipは繊毛の根元にある基底小体に局在することが知られている。C末端領域を欠損させたIcip変異体をNIH-3T3細胞に発現させ、その繊毛への局在を観察すると、C末端領域欠損Icip変異体は正常な基底小体への局在が観察されなかった。一方、IcipのC末端領域のみをNIH-3T3細胞に発現させると、基底小体への局在が観察された。注目すべきことに、ヒトICIPのC末端領域を欠損させる短縮型変異が、繊毛病の原因であると報告されている。これらの結果と知見から、ゲノム編集を用いてIcipのC末端領域が欠損したIcip部分機能欠損マウスを作製した。現在、Icip部分機能欠損マウスに対して電気生理学的解析と解剖学的解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Ickと相互作用する因子のスクリーニングによりIcipを見出した後、ゲノム編集を用いてIcip部分機能欠損マウスを作製した。さらに現在、作製したIcip部分機能欠損マウスに対する電気生理学的解析と解剖学的解析も始めており、研究の進捗として、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、Icip部分機能欠損マウスを解析することで、繊毛形成におけるIcipのC末端領域の機能とその生理学的役割を明らかにする。それにより、水頭症や網膜色素変性症を含む繊毛病の発症・病態メカニズムの解明につなげる。以上の実験結果を取りまとめ、学会発表・論文投稿する。
|