2020 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波放電式中和器の大電流化およびプラズマ物理現象の解明
Project/Area Number |
20J13041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森下 貴都 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 電気推進 / イオンエンジン / 中和器 / レーザー誘起蛍光法 / マイクロ波 / イオン速度分布関数 / 内部 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波放電式イオンエンジンは、「はやぶさ」小惑星探査機において電子電流135mA・推力8mNであったが、「はやぶさ2」では180mA・10mNへと高出力化され、実用に供された。一方で「はやぶさ」での中和器劣化に示されるように中和器プラズマの解明が課題である。本研究は、このイオンエンジンの適用範囲の拡大のために、さらなる高出力化を目標とする。そのための電子電流の増強及び、今後の性能向上及び劣化メカニズム解明の知見となる中和器内部イオンの速度場および密度計測を目的としている。 初めに内部を光学的に観測可能な可視化中和器を開発した。内部可視化中和器は「はやぶさ2」実機相当の中和器と比較して、7%以内の電圧値の誤差でI-V特性を模擬している。特に「はやぶさ2」の代表的な作動点である180mA作動時には、2%以下の誤差であることが確認された。次に中和器内部及びプルームのイオン速度分布関数や密度分布を2次元で計測するためにレーザー誘起蛍光法(Laser induced fluorescence, LIF)の実験系を構築した。本実験系を可視化中和器に適用し、中和器内部のプラズマを計測した結果、イオン速度分布関数は3つのPopulationを持つことが分かった。またプルーム上においてもLIF計測を行ったところ、本計測結果と先行研究で行われた静電プローブ測定の結果について、密度分布が校正係数を用いればR2=0.96の精度で一致した。またプルーム上では2つのピークを持つイオン速度分布関数が計測された。内部とプルーム上のLIF計測について進剤流量、マイクロ波電力、アノード電流値でパラメトリックに計測した。内部においては、パラメータによりイオン速度分布関数の全体強度は変化するが、3つのPopulationの存在比やピーク速度は優位に変わらない事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ対策の出勤制限により年平均40%程度のみ出勤可能となった。しかし限られた時間内で当初の予定通りの成果が得るために、データ取得工程の自動化を在宅中に進めること等を行った。また、海外の研究機関で実験予定であったが中止された。しかし所属研究機関で得られるデータの充実化を行い、これに対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
中和器内部で計測された3つのPopulationについて発生原因の特定を行う。速度ゼロ付近のPopulationについては電荷交換衝突による影響も考えられるため、今後真空度変化における感度を調査して評価する。正方向のPopulationについて、正方向つまり中和器の外部アノード方向に向かうイオンが存在する事も考えられるが、負方向に匹敵するフラックスで存在するとは考えづらい。レーザがアンテナ表面で反射したことで逆方向も検出された可能性があり、今後アンテナを黒体化することや斜めからのレーザ入射に変更することを検討する。 また「はやぶさ」と「はやぶさ2」の磁場を可変とする中和器の内部を計測する。両モデルのプラズマ生成領域を比較することで、性能変化要因を特定する。
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Research Products
(4 results)