2020 Fiscal Year Annual Research Report
ディジタル信号処理を用いたコヒーレントナイキストパルス伝送の高度化に関する研究
Project/Area Number |
20J13062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 光佑 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ディジタルコヒーレント伝送 / ナイキストパルス / OTDM / Chirped FBG / 低非線形分散マネージ伝送路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来の光伝送技術では困難な1波長当たり1 Tbit/sを超える伝送容量と高い周波数利用効率を同時に実現可能なコヒーレントナイキストパルス伝送のさらなる高性能化を目指している。本方式によりこれまでに、単一チャネル15.3 Tbit/s(偏波多重1.28 Tbaud, 64 QAM)-150 km伝送を8.3 bit/s/Hzの周波数利用効率で実現している。本伝送実験では、光学的非線形性が大きい分散補償用ファイバ(IDF: Inverse Dispersion Fiber)を含む分散マネージ伝送路を使用しており、その中で生じる非線形光学効果により伝送後の復調特性が劣化していた。そこで、素子長が短尺であるため非線形性が極めて小さい分散補償素子であるChirped Fiber Bragg Grating(CFBG)とLiquid Crystal on Silicon(LCoS) 素子を組み合わせた低非線形分散マネージ伝送路を新たに構築した。LCoS素子を用いてCFBGの群遅延特性を高精度に補償することで、11 nmにわたる広い帯域で残留遅延量を1.4 ps以下に低減した。新たに構築した低非線形分散マネージ伝送路は、従来のIDFを用いた伝送路に比べて非線形性が半分以下に低減している。この特性を活かし、本伝送路を用いて単一チャネル15.3 Tbit/sコヒーレントナイキストパルス伝送実験を行った。その結果、前方誤り訂正(FEC: Forward Error Correction)に必要なオーバーヘッドが25.5から20 %に低減し、周波数利用効率を8.3から8.7 bit/s/Hzに増大することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、これまでの単一チャネルのコヒーレントナイキストパルス伝送システムにWDM伝送技術を導入する計画を記載していた。一方で、昨年度から検討を進めていたCFBGとLCoSを組み合わせた低非線形分散マネージ伝送路を用いることにより、単一チャネル伝送において復調特性が改善する傾向が研究開始時点で見られていた。そのため、単一チャネル伝送の高性能化に優先的に取り組むことにした。その結果、単一チャネル15 Tbit/s信号の160 km伝送時に前方誤り訂正に必要なオーバーヘッドを低減し、周波数利用効率を8.3から8.7 bit/s/Hzに増大することに成功した。 ここで得られた知見をもとに、当初計画していた1波長あたり1 Tbit/s級の超高速大容量コヒーレントナイキストパルスWDM伝送の実現に向けて、周回伝送路の設計ならびにWDM長距離伝送実験系の構築を進めている。4月末~5月中には伝送実験に着手できる見込みであり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
周回伝送路およびWDM長距離伝送実験系の構築が完了した後、コヒーレントナイキストパルスWDM伝送実験に着手する。伝送実験では、1波長当たり1 Tbit/s級となるシンボルレートと多値度の組み合わせの条件で、これまでに150~160 km伝送に関する知見のある単一チャネルの場合と新たに取り組むWDMの場合で長距離周回伝送を行い、それらの伝送性能を比較する。これにより、WDM化することおよびこれまでの単一チャネル伝送時よりも伝送距離を拡大することによる伝送性能の変化およびその制限要因を明らかにするとともに、その考察を基に伝送性能の改善に取り組む。 その後、さらなる伝送距離の拡大に向けて、ディジタル信号処理による光ファイバ伝送路中の非線形光学効果の補償に取り組む。これまでにCanada, MacMaster Universityとの共同研究により、機械学習を用いた非線形歪み補償技術の開発を進めてきており、そのコヒーレントナイキストパルスWDM伝送への導入について検討する。 以上により、1チャネル当たり1 Tbit/sを超える伝送速度を有し、かつ500 km以上の長距離伝送が可能なコヒーレントナイキストパルスWDM伝送技術を確立する。
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Research Products
(4 results)