2020 Fiscal Year Annual Research Report
小脳顆粒細胞の新規発生制御機構の解明ー小児がんメデュロブラストーマへの展開ー
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20J13210
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
白石 椋 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 小脳顆粒細胞 / 転写因子 / 髄芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は小脳顆粒細胞における転写因子MEIS1の機能解析を行っている。転写因子MEIS1を小脳顆粒細胞特異的にノックアウトすると、小脳顆粒細胞の増殖性が低下することがわかっていたが、そのメカニズムについては不明であった。 申請者は転写因子MEIS1が、小脳顆粒細胞の増殖性の維持に必須であるATOH1タンパク質の安定化を介して、小脳顆粒細胞の増殖性を促進していることを示唆した。 興味深いことに、MEIS1は転写因子であるにもかかわらず、転写活性化ドメインを持たないスプライシングバリアントがATOH1タンパク質を安定化できることを示した。 さらに、このスプライシングバリアントは小脳顆粒細胞のうち、増殖性の高い細胞群で発現が高くなっており、MEIS1の転写活性化機能を持たないバリアントによる小脳顆粒細胞の発生制御機構を明らかにしつつある。 また、MEIS1は小脳顆粒細胞から発生する悪性脳腫瘍である小脳髄芽腫で発現が高くなっていること、そしてMEIS1が小脳顆粒細胞の増殖性を促進することから、MEIS1が小脳髄芽腫の新規癌遺伝子であることが示唆された。そこで、MEIS1の小脳髄芽腫における機能解析をおこなうことで新規治療標的を同定することをもう一つの目的としている。MEIS1の小脳髄芽腫における機能解析を行うために、当研究室で得意とするin vivo電気穿孔法を用いた実験系の開発を目指している。小脳髄芽腫ではSHH経路の変異がみられ、これが発がんの初期段階に重要である。そこで、SHH経路の変異とMEIS1の過剰発現を小脳顆粒細胞に電気穿孔法による遺伝子導入により誘導することで、小脳髄芽腫におけるMEIS1の機能解析を行うことを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小脳顆粒細胞におけるMEIS1の機能解析は順調に進んでいるが、電気穿孔法による髄芽腫発がん系の構築は遅れている。理由として、過剰発現を引き起こすために使用しているpiggybac transposonシステムが何らかの理由で小脳顆粒細胞において機能しないためである。現在は、この問題の解決方法を模索している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画ではMESI1-SYTL4-CXCR4の経路の着目する形で当初は書いていたが、現在はMEIS1によるATOH1タンパク質の安定化機構に着目している。理由としては、転写因子によるタンパク質安定化機構という今まで報告にない新規のメカニズムを詳細に解析する方が、研究としてのインパクトが高いからである。 髄芽腫に関しては、まずはPiggy bac transposonシステムの問題点の解決を目指す。
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