2020 Fiscal Year Annual Research Report
新奇動作機構を有した高機能化グラフェンセンサの開発
Project/Area Number |
20J13214
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
坂本 優莉 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / チオール / マレイミド / 反応モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は腐敗由来分子を新たなターゲットガスとして分子内電荷反転を検出原理としたセンサの開発及び新奇動作機構を用いたセンシング原理の解明である。1年目はチオールガス検出の高感度化及びその検出機構の考察として状態密度の計算等を行った。 既存の一般的なグラフェンFETセンサでは、電荷をもつ分子をターゲットとし、ターゲットと抗体やDNAアプタマー、超分子の弱い分子間相互作用による補足・吸着を用いている。本研究では、強い補足能を実現するため、共有結合に着目した。1年目の研究では、チオール類と特異的に反応するマレイミド基を持つ修飾分子をグラフェン上に修飾し、ターゲットのチオールガスと修飾分子の反応を用いたターゲット検出を試みた。ターゲット分子特有な化学反応を用いることで、分子間相互作用に律速されないターゲット捕捉能を生かした選択性を実現している。また、ターゲットが修飾分子と共有結合を形成するため検出範囲が解離定数の前後2桁以下の範囲に限られず広いダイナミックレンジが期待できることを生かした低濃度での検出を実現している。1年目の主な進捗としては、検出に用いる修飾分子を選定し直すことですでに得ていたチオール検出よりも大きなシグナルを得ることができた。また、量子化学計算やDFT計算を実験と併用し得られた実験結果を計算の観点から考察を行った。 1年目は前半に新型コロナウイルス流行の影響で実験が制限されていたため、計算を用いて研究を進めた。2年目は、ハロゲン化アルキルとアミン基の求核置換反応を利用し、アミン類を検出する。検出速度および高シグナル化を両立するためには、求核置換反応の起こしやすさ及び電気陰性度を考慮した材料の最適化が必要である。使用ハロゲン原子および求核置換反応で重要となる分子骨格に注目し、検出濃度としてサブppbレベルでの検出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標は1. チオールガス検出の高感度化及び2. ハロゲン化アルキルとアミン基の求核置換反応を利用したアミン類の検出であった。1点目に関しては、計画ではパラジウムアシストによるメタンチオール検出の高感度化を考えていたが期待通りのシグナルの増強を得られなかった。そのため、マレイミド基を持つ分子の中で修飾分子を選択し直すことで、メタンチオールを検出した際のシグナルの変化を大きくすることに成功した。更に、FTIRの導入により分子変化の分析も行うことができた。2点目については、1年目前半に新型コロナウイルス流行の影響で実験が制限されていたため2年目に行うことにした。代わりに、1年目中には、2年目に計画していた計算を用いた研究を進めることとした。計算を用いた検出原理の考察と検出に用いる修飾分子の選定を目指し、Gaussianを用いた量子化学計算やQuantum ESPRESSOを用いたDFT計算を習得し、グラフェンを修飾する前後及びグラフェン上の修飾分子がメタンチオールと反応する前後について電荷分布や状態密度をそれぞれ計算し実験結果と比較することができた。 以上のように、新型コロナウイルス流行の影響で研究内容の順は変更したものの、目標を達成できたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目はこれまで対象としていたチオールガスの代わりにアミン系ガスをターゲットとした新たな検出機構の開発を目指す。目的とする反応を検出できているか確認するにはより小さい密閉空間での検出が有効と考えられる。そこで、ガス分子の検出の準備として、溶液センサとして液中でターゲットを検出することを考えている。まず、これまでのチオールガス検出機構を溶液センサに用いて液中のチオール分子の検出を試みる。次に、ハロゲン化アルキルとアミン基の求核置換反応を利用し、液中のアミン分子の検出を試みる。その後、その検出機構を応用してアミン系ガスの検出を試みる。併せて、1年目に行った計算をアミン検出機構における反応前後についても行い、実験結果と合わせて、グラフェンセンサにおける検出原理を構築する。
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