2020 Fiscal Year Annual Research Report
拡散相関分光法を用いた高精度生体組織血流計測システムの開発
Project/Area Number |
20J13222
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中林 実輝絵 明治大学, 明治大学大学院 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 拡散相関分光法 / 近赤外分光法 / 生体模擬ファントムモデル / 血流計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
拡散相関分光法(Diffuse correlation Spectroscopy: DCS)を用いた血流計測システムの開発と評価を目的として、(A)DCSシステムの改良、(B)DCS装置によるDCS-空間分解近赤外分光法(Spatially Resolved Near Infrared Spectroscopy: SRNIRS)同時計測システムの開発、(C)生体模擬ファントムモデルを用いたDCSシステムの性能評価を進めた。 (A)DCSシステムの改良では、計測および解析プログラムの改良を行った。計測プログラムの改良では、従来の2倍以上のサンプリング周波数での計測に成功し、自転車運動などのより高速時での計測が可能となった。解析プログラムの改良では、時間分解能の向上によって脈波検出に成功し、運動や心拍などの生体状態に同期した血流動態をより高精度に解析可能となった。 (B)DCS-SRNIRS同時計測システムの開発では、DCSでの組織血流、NIRSでの酸素飽和度の同時計測によって組織の循環・代謝機能の評価を行うシステムの確立を目指している。従来の2点同時DCS計測システムへの波長の異なるレーザー光源の追加、レーザー光の入射タイミング、解析プログラムの改良などによって、DCS装置を用いたDCSとNIRSの同時計測を行う環境を整えた。 (C)DCSシステムの性能評価では、ファントムモデルの開発と血流速度の絶対値のより精確な推定手法の確立を進めた。3Dプリンタを用いた2層の筐体作成、散乱物質や吸収物質の混合、シリンジポンプでの流量制御によって、生体特性および流速の複数条件を再現可能なファントムモデルの開発を進めた。さらに、1種類の生体特性と安静時血流の流速範囲を再現した1 層ファントムモデルでの計測で、一定流速以上の時に血流速度の線形性が確認され、絶対値の推定が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は感染症流行の影響で大学での研究に多くの制限が生じたこと、申請者の体調不良などの影響で数か月のブランクが生じたが、申請者の体調回復後は研究計画に沿って着実に研究を進めている。上述のように、開発を行っているDCSを用いた血流計測システムの応用方法の拡張に向けたDCSシステムの改良、DCSとNIRSの同時計測システムの開発、生体特性を考慮した生体模擬ファントムモデルでのDCSの性能検証が主に進行している。 2020年度の研究発表は、2020年度までに計測したデータを取りまとめる形で、筆頭発表者としての学会発表が1件、共同著者としての査読付き学術論文が1件、共同発表者としての学会発表が6件である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度で開発を行ったDCS装置を併用したNIRS同時計測システムの確立に向けて、性能検証と改良を行う。具体的には、開発を行った同時計測システムと既存のNIRS計測装置で反応性充血試験などの既知な生理学的応答を用いた計測を行っていき、DCSのみ計測時の計測結果と同時計測システムでのDCSの計測結果、既存のNIRS計測装置での計測結果と同時計測システムでのNIRSの計測結果を比較し、同時計測システムがDCSのみでの計測や既存のNIRS計測装置での計測結果と同程度以上の精度で計測可能となるよう改良を行っていくことで、DCS-SRNIRS同時計測システムの確立を目指す。 また、生体模擬ファントムモデルを用いたDCSシステムの性能評価においては、解剖学的特性・光学的特性などの生体特性を変化させた複数の2層ファントムモデルを作成し、2層それぞれで流速制御を行うことで、様々な血流応答の再現を可能とし、それらの複数条件においてDCS多点同時計測を行う。得られた計測結果を基に、生体特性や流速が与える血流速度への影響等を解明していくことで、血流速度の絶対値のより精確な推定手法の確立と、組織ごとの血流応答の分離アルゴリズムの開発を行う。 以上の研究を英文原著論文としてまとめ、国際学術雑誌に受理されるよう努力し、2021年度での学位取得を目指す。
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Research Products
(8 results)