2020 Fiscal Year Annual Research Report
電波観測による宇宙ジェット先端領域の磁場構造とフィードバックの解明
Project/Area Number |
20J13339
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
酒見 はる香 鹿児島大学, 理工学研究科, プロジェクト研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 電波天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は天の川銀河系内に存在するX線連星から噴出する宇宙ジェットが持つ磁場構造と、ジェットが周辺環境に対して与える影響を明らかにすることを目的として行われた。ターゲット天体は系内で最も活発に活動するX線連星の1つであるマイクロクエーサーSS433であり、磁場構造解析についてはアメリカ国立電波天文台が運用する電波干渉計VLAで観測されたデータを用いて行われた。特に2.0-4.0 GHzの周波数帯域の観測データについての解析を行なった。観測領域全体をモザイク観測したイメージの偏波解析は前例が少なく、偽のシグナルが混入している可能性があったため、そのようなシグナルの有無の調査を実行した。その結果ほとんど観測イメージに影響がないことを確認した。最終的に得られた偏波観測イメージを用いて磁場構造解析を行なったところ、SS433ジェット先端領域に形成された衝撃波と考えられているフィラメント構造が一続きの一様な構造ではなく複数の構造に分かれること、またそれらに付随する複雑な磁場構造を明らかにした。また一部の構造が非常に高い偏波率を示し、ジェット先端のホットスポットに相当する可能性が高いことを指摘した。 ジェットと周辺の星間物質との相互作用については、SS433を取り囲むように存在している電波星雲W50と、さらにその周辺に存在する中性水素ガスとの空間分布の比較を行なった。その結果、33~55 km/sの速度帯域の中性水素ガスが、W50がある領域でcavity構造を形成していることを確認し、SS433/W50系と関係がある可能性が高いことを示した。さらに同速度帯の分子雲の観測を野辺山45m電波望遠鏡とASTEを用いて行なった。その結果、SS433東側ジェット先端領域に幾つかの分子雲を同定し、さらにその速度構造や密度構造から、SS433ジェットと衝突している可能性が高いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までで、当初予定していたVLAの2.0~4.0GHzの観測データと野辺山45m電波望遠鏡、ASTE望遠鏡の観測データの解析は完了しているが、VLAの4.0~8.0GHzの観測データの解析が遅れている。理由として、モザイク観測の偏波解析には偽のシグナルが紛れていないか十分に調査する必要があり、この作業が当初想定していたよりも時間がかかることが明らかになったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はVLAの2.0~4.0GHzの磁場構造解析の結果と野辺山45m電波望遠鏡、ASTE望遠鏡の観測データ解析結果についての論文執筆作業を進めている。今後は引き続きVLAの4.0~8.0GHzの偏波観測データのイメージクオリティの調査を進めつつ、本研究の発展としてSS433の類似天体である系外の超大光度X線源の観測提案を世界各国の電波望遠鏡で行う予定である。本研究課題で実施した解析を系外の超大光度X線源にも適用し、SS433と同種の天体であるのかどうかを明らかにすることを目指す。また、SS433についてはジェット先端領域以外に分布する星間物質の追観測を行う予定である。近年SS433ジェットの中間領域からガンマ線放射が見つかり、SS433は宇宙線粒子加速源として注目されている。SS433ジェット内で加速された宇宙線陽子がガンマ線放射領域の周辺に存在する星間物質と相互作用してガンマ線を放射している可能性があるため、ガンマ線起源となりうる星間物質を特定しその物理的な特徴を調査することで、新たな観点でジェットが周辺環境に及ぼす影響について明らかにすることができると考えている。
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Research Products
(8 results)