2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J13356
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
和田 将吾 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 寄生植物 / Striga hermonthica / 吸器 / 吸器誘導物質 / DMBQ / ケミカルスクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、寄生植物ストライガの新規吸器誘導物質および吸器形成阻害物質の単離・同定である。昨年度の計画では、主にストライガとDMBQの培養液(以後、Striga-DMBQ培養液と呼ぶ)に含まれる未知の吸器誘導物質の単離と、ケミカルスクリーニングを行う予定であった。ケミカルスクリーニングでは、名古屋大学ITbMから寄与を受けた約10,000化合物において吸器誘導物質および吸器形成阻害物質の探索を行った。このスクリーニングにより単離された化合物とストライガの吸器誘導能の関係性を調べる事で、より吸器誘導物質の作用機構を理解できると考えられる。このスクリーニングにより、新規吸器誘導物質および吸器形成阻害物質を見出す事ができた。次に、Striga-DMBQ培養液からの未知の吸器誘導物質の単離を目指した。これまで吸器誘導物質としてDMBQが主に働いていると考えられており、未知の吸器誘導物質が単離されることは寄生植物の寄生メカニズムの理解において非常に重要であると考えられる。未知の吸器誘導物質はペプチド性である可能性が高い事がわかり、プロテオーム解析を行った。しかし、本研究で用いているストライガのレファレンスデータが存在しないため、レファレンスデータの作成を行った。このレファレンスデータを用いたStriga-DMBQ培養液のLC-MS解析により候補ペプチドの探索を行い、候補ペプチドを得る事ができた。これら候補ペプチドを人工的に合成し実際に吸器誘導能を有しているのかを試験した。 これらと並行して、作成したプロテオーム解析のレファレンスデータを用いて、DMBQ処理とシリンガ酸処理の吸器誘導時の遺伝子発現パターンを解析した。その結果、吸器誘導初期(吸器誘導後1-3時間)において、DMBQ処理とシリンガ酸処理とで遺伝子発現パターンが異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名古屋大学のITbMから供与された全9,920化合物のスクリーニングを行った。新規吸器誘導物質として6化合物を、単離することができた。この6化合物のうち4化合物はDMBQと同程度の強い吸器誘導活性を持っていた。興味深いことに、このうちの3つの化合物は類似した構造を持っていたが、もう一つの強い吸器誘導活性をもつ化合物にはこの様な構造をもたなかった。また、DMBQと比べて弱い活性を持つ2化合物では、共通な構造は見られなかった。これと並行して、吸器形成阻害物質のスクリーニングを行った。これにより、高い吸器形成阻害能を示す化合物が2種類、弱い吸器形成阻害を示す化合物が3種類の全てで、5種類の化合物を見出すことができた。この中には、高い電子吸引性を有するスルホアミド構造を持っている化合物が3種類含まれていた。 Striga-DMBQ培養液に含まれる未知の吸器誘導物質の単離・同定を行った。まず、培養液の物性の解析として、タンパク質消化処理や分液を行った。これにより、未知の吸器誘導物質はペプチドである可能性が高いことがわかった。さらに、限外ろ過フィルターを用いた分画によりこの未知の吸器誘導物質の分子量は3 kDa以下である事がわかった。次に、Striga-DMBQ培養液とコントロールとしてストライガと滅菌水の培養液のプロテオーム解析を行った。しかし、ストライガのレファレンスデータが存在しないため、トランスクリプトーム解析のデータを元にレファレンスデータを得た。プロテオーム解析により、3つの候補ペプチドを見出す事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではケミカルスクリーニングの化合物の解析とStrig-DMBQ培養液からの未知の吸器誘導物質の単離を行う予定である。ケミカルスクリーニングでは、複数の新規吸器誘導物質や吸器形成物質を得る事ができた。今現在の課題点としては、これら化合物がどの様な作用機構を介して吸器誘導能や吸器形成阻害能を発揮しているのか不明であることである。これらを解決するには、得られた化合物の様々を用いたアナログ解析を行うことや、化合物を他ハマウツボ科寄生植物の吸器形成に関わる変異体に与え吸器にどの様な影響を与えるのかを調査する事で、どの様な作用機構を介しているのかを推定する事ができると考えられる。また、吸器形成阻害物質に関しては農薬などの農業分野への応用を目指す。そのために、ポット試験を行い土壌中でも吸器阻害能を発揮するのかを調べる。 Striga-DMBQ培養液からの未知の吸器誘導物質の同定のために、培養液の物性の解析やプロテオーム解析を行った。現在、見出された候補ペプチド3配列の内1配列は人工的に合成し、吸器形成阻害能の有無を確認した。残りの2配列に対しても同様に人工的に合成し、吸器形成阻害能の有無を確認する事で未知の吸器誘導物質の同定を行う。これと並行して、HPLCを用いた分画を行い、Striga-DMBQ培養液からの未知の吸器誘導物質の単離を目指す。まず、この分画に使用するカラムと有機溶媒の検討、分画条件の検討を行う。DMBQをコントロールとして、未知の吸器誘導物質に由来する吸器誘導活性を示す分画の取得を目指す。その後、その分画のLC-MS解析を行い最終的なペプチド配列の決定を行う予定である。
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