2020 Fiscal Year Annual Research Report
多座配位子の分子設計による酸素架橋多核セリウム錯体の合成と酸素酸化触媒機能の開発
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20J13357
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
篠原 功一 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | セリウム / 酸素架橋金属錯体 / 異種多核金属錯体 / ロジウム / 白金 / 脱プロトン化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
セリウムは、安定な三価の酸化数に加え、希土類元素では珍しい四価の酸化数をとることができ、三価と四価の間の一電子酸化還元能を活かした酸素酸化触媒の有力な候補となり得る。また、セリウムの酸化物であるセリア (CeO2) は酸素の吸着や放出に優れた化合物として利用されており、その高い酸素吸蔵能力から自動車の三元触媒に代表されるように不均一系触媒の担体や助触媒として応用されている。このような背景のもと、酸素架橋セリウム多核錯体をセリアの分子モデルとして捉え、その構造や反応性、および異種金属の添加効果による特異な反応性の発現について詳細な研究が行われてきた。本申請者は窒素三座配位子を用いることにより、三価セリウム錯体の酸素酸化反応が進行し、酸素架橋六核セリウム錯体が形成することを見出している。また、銅がセリアに担持された固体触媒のモデルとして酸素架橋セリウム―銅複核錯体の合成にも成功している。今回、① 酸素架橋セリウム―コバルト錯体の合成と ② 脱プロトン化反応を利用した酸素架橋セリウム―貴金属錯体の合成を達成したので詳細を報告する。 ① エタノールアミン系配位子存在下、カルボン酸と三価硝酸セリウム、コバルトアセテートを反応させることで、金属組成 Ce6Co2 の酸素架橋八核錯体が得られ、その構造をX線結晶構想解析により明らかにした。すべてのセリウムの酸化数は三価から四価に変化しており、空気中の酸素によって酸化されたことが分かった。 ② セリウムアミド錯体によるヒドロキシロジウム錯体の脱プロトン化反応の結果、金属組成 Ce3Rh10 の酸素架橋多核錯体が得られた。さらに、ヒドロキシ錯体として白金二核錯体を用いた場合には、金属組成 Ce3Pt8 のカチオン性酸素架橋多核錯体が形成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者は、酸素架橋セリウム多核錯体をセリアの分子モデルとして捉え、その合成法の確立、構造同定や反応性、および異種金属の添加効果による特異な反応性の発現について研究を行ってきた。種々酸素架橋多核錯体の合成検討を行っていく中で、支持配位子として窒素、および酸素系多座配位子を用いることで、酸素架橋セリウム六核コア上に存在する第一周期遷移金属を安定化できることを明らかにした。また、ロジウムや白金などの貴金属ヒドロキシ錯体をセリウム錯体により脱プロトン化することでセリウムー貴金属酸素架橋配位子を容易に構築できることを見出した。こちらの研究成果は、初期検討の段階ではあるものの、学術論文に投稿するに値する結果であることから、研究課題の達成に向けて成果を積み重ねている。上述の成果は、本申請者の徹底的な文献調査によって着想された成果であるとともに、的確な反応検討によって得られた成果であり、本申請者の研究活動に対する高い意欲と展開力を支持している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の検討で見出した多座配位子を用いたセリウムー第一周期遷移金属酸素架橋多核錯体の合成法と貴金属ヒドロキシ錯体のセリウム錯体による脱プロトン化反応によるセリウムー貴金属酸素架橋多核錯体の合成法を汎用性の高い方法にすべく、他の異種金属を検討的に探索し、セリウムを含有する酸素架橋多核錯体の合成を引き続き行う計画である。 また、1年目の検討において見出した、酸素架橋多核錯体において三種類目の金属を添加し、三元系金属錯体の合成を行う予定である。具体的には、セリウム錯体と二種類の金属前駆体を反応段階で混合し、錯形成を試みる予定である。さらに、すでに合成済みである四価セリウム含有の異種金属多核錯体の還元反応を用いて、さらなる複核化の検討や合成した錯体を用いたアルコール類やアルカン類の酸素酸化反応を検討する予定である。
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