2020 Fiscal Year Annual Research Report
Three-dimensional dualities and their applications to strongly-correlated quantum many-body systems
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20J13415
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
古澤 拓也 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 対称性 / 量子異常 / 低エネルギー有効理論 / 強相関量子多体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では,強相関量子多体系である(1)量子反強磁性体,(2)2カラー量子色力学,(3)超流動ヘリウムの解析を行い,以下の結果を得た. (1)量子反強磁性体の時間反転対称性を含む量子異常を発見した.この量子異常は有限温度においても存在し,CPN模型の有限温度相図に非自明な制限を与えることを示した.この研究は本人を含む若手研究者2名の共同研究であり,論文はPhysical Review Bに掲載されている. (2)2カラー量子色力学の有限密度・有限温度相図の解析を行った.特に虚数化学ポテンシャルが存在する状況において,非自明な量子異常があることを発見した.この量子異常の帰結として,2カラー量子色力学の有限密度・有限温度相図に対する非摂動的な強い制限がかかることを見出した.また,その量子異常の構造が量子反強磁性体と同一であることを指摘した.論文はPhysical Review Researchに掲載されている. (3)超流動ヘリウム3-A相のホール粘性を明らかにした.具体的には,A相の低エネルギー有効理論を微分展開の1次までで構築し解析を行った.超流動ヘリウムが非相対論的微分共変性と呼ばれる対称性を持つことを指摘し,この対称性も課すことによって,低エネルギー有効理論の形により強い制限がかかることを発見した.この制限を課した低エネルギー有効理論を用いて解析を行うことで,A相のホール粘性の向きと大きさが一意的に決定されることを発見し,その実験的な観測手法の提案も行った.論文はPhysical Review Bに掲載されている. 今年度は,国際会議1件と国内会議3件に加え,国内研究機関における2件のセミナー発表を通じて,上記の研究に関する情報発信を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
双対性と深い関係にある対称性の量子異常を活用することで,強相関量子多体系の解析を行い,当初想定していなかった研究成果を得ることができたため. 特に研究成果(2)では,新しく発見した量子異常の構造に基づき,2カラー量子色力学の閉じ込め・非閉じ込め相転移が量子反強磁性体で議論されている非従来型の相転移である可能性を指摘した.この結果は,ハドロン物理学と物性物理学の非自明な関係性を示唆する重要な結果であったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、対称性の量子異常の探索と応用を推し進める予定である. 特に,量子異常がある量子多体系の有限温度での振る舞いにも着目し研究を進める. 有限温度では,多くの系は流体力学で記述されるが,量子異常がある場合,流体力学の方程式がどのような変更を受けるかなどを研究し,その強相関系に対する応用を行う. さらに,その結果を双対性の解明に活用することを試みる。
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