2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Role of Bloom Syndrome Protein BLM in Maintenance of Genome Stability
Project/Area Number |
20J13601
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塚田 海馬 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | Bloom症候群 / BLM遺伝子 / DNA損傷応答 / DNA損傷修復 / タンパク質-タンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、“光過敏症、低身長症や若年性発がんを引き起こす常染色体劣性遺伝病Bloom症候群の原因遺伝子BLMが細胞のゲノム安定性維持に関わるメカニズムを解明すること”を目的としている。 採用1年目では、BLMと他タンパク質の結合に着目し実験を行った。特に、“BLMと一本鎖DNA結合タンパク質RPAの結合に着目し、その結合が担うゲノム安定性維持の分子メカニズムを解明すること”を目的として、英国オックスフォード大学のAndrew Blackford博士と共同で実験を行った。BLMのRPAとの相互作用を介したDNA複製異常時の応答機構に関する成果をNature Communications誌に筆頭著者の一人として発表している。 採用2年目では、“BLMの二量体化能の役割”、“BLMと家族性乳がん原因遺伝子BRCA1との関係”という2点に着目して実験を行った。 BLMの二量体化能に関しては、豪州セントヴィンセント医学研究所のAndrew Deans博士、英国オックスフォード大学のAndrew Blackford博士と共同で実験を行った。その結果、BLMの二量体化能が細胞内でBLMが姉妹染色分体交換を抑制し、細胞が生存するために必要であることを明らかにし、Proceedings of the National Academy of Sciences誌に共著者の一人として研究成果を発表している。 BLMとBRCA1との関係に関しては、BLM-BRCA1が合成致死の関係であることを見出し、BLMがBRCA1変異がんの治療における有用な分子標的となり得ることを明らかにした。現在、合成致死が生じる分子メカニズムの解析をAndrew Blackford博士と共同で行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、光過敏症、低身長症や若年性発がんなどを呈するBloom症候群原因タンパク質BLMの細胞内での役割・機能を明らかにすることを目的としている。採用期間内において、BLMの一本鎖DNA結合タンパク質RPAとの相互作用を介したDNA複製異常時の応答機構に関する成果をNature Communications誌に筆頭著者の一人として発表している。また、BLMの二量体形成機構とゲノム安定性維持における重要性に関する成果をProceedings of the National Academy of Sciences誌に共著者の一人として発表している。 さらに、本研究の過程で培った技術をポリヌクレオチドキナーゼ・ホスファターゼ(PNKP)の機能および制御機構の解析に生かすことで、関連分野の研究にも大きな進展があった。具体的には、PNKPの細胞核および核小体への輸送機構、DNA損傷部位への秒単位での動員機構などを明らかにし、筆頭著者として2篇の論文を発表している。また、PNKPのDNA複製における新たな役割を見出し、筆頭著者として現在論文投稿準備中である(bioRxivには投稿済)。 以上より、本研究自体に大きな成果があったが、それに加えて関連分野の研究にも大きな波及効果があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、BLMのRPAとの結合は既知の表現型の中で複製ストレス応答のみに関与することが明らかとなった。今後は、これまでに樹立した細胞や実験系を用いて、BLM-RPA結合がBLMの未知の表現型に関わる可能性があるのか、より詳細な解析を行う。 また、今回の成果から、BLMと他タンパク質との結合を欠失させた一連のBLM変異体を作製することで、複製ストレス応答のみでなく、他の機能にのみ関与する変異体を作製できる可能性が示唆された。そして、この特定の機能にのみ関与する変異体(機能分離変異体)を利用することで、これまで解析することが困難であったBLMの機能とBloom症候群の症状との関係性を解明できる可能性がある。そこで、今後はBLMの他の領域の重要性や他タンパク質との結合にも着目し、ゲノム安定性維持におけるBLMの更なる役割と制御機構の解明を目指す。
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Research Products
(8 results)