2020 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸菌Lactobacillus caseiによる金ナノ粒子合成機構の解明
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20J13602
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 由悟 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 金ナノ粒子 / 環境微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナノ粒子はその粒子径や形状によって特性が変わることが知られている。特に粒子径が小さくなることで新たな構造や物性が現れる。これまでの研究から乳酸菌の細胞膜に存在する糖脂質DGDG(ジグリコシルジアシルグリセロール)と菌体外に放出しているLNtri(Lacto-N-triose)、乳酸の3物質が金ナノ粒子に寄与していることを明らかにした。そこで、3物質の分散機能や還元部位の探索により乳酸菌における金ナノ粒子合成機構を解明することで金ナノ粒子の合成の制御を目的に研究を進めてきた。また、工業的手法により合成された金ナノ粒子はすでに実用化されており、乳酸菌を模倣して合成したナノ粒子がどれほど実用化できるか調べるために、合成した金ナノ粒子の触媒活性試験を行った。さらに、金属を多く含む環境中から微生物を単離培養し、金ナノ粒子やその他の金属ナノ粒子合成の活性を観察することを計画し、研究を行った。 金ナノ粒子合成における機能部位探索のために、DGDGにより合成した金ナノ粒子のコロイド溶液をHPLC-ICP-MS(高速液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析)に供し、金ナノ粒子に分散剤として結合した成分を抽出した。分散剤成分を詳細に分析したところ、金イオンにより酸化されて過酸化脂質となった脂質が金ナノ粒子に分散剤として結合していることが考えられた。 また、金属イオンを多く含む環境から鉛に耐性を持ち、金、銀、パラジウム、白金などの貴金属やカドミウム、ニッケルなどの重金属といった多様な金属に対してナノ粒子合成能力を持つ微生物KKY-29株を単離した。この微生物はPseudomonas属の株であり、中でも酢酸鉛水溶液中で振盪することで緑鉛鉱(Pb5(PO4)3Cl)および水白鉛鉱(2PbCO3・Pb(OH)2)からなるナノ粒子を菌体内に合成していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画に基づき、還元剤・分散剤としての機能部位および合成した金ナノ粒子の触媒活性の評価を行った。金ナノ粒子合成における機能部位探索の結果、DGDGは金イオンにより酸化されて過酸化脂質となり、さらに糖の6位がカルボキシル基になっていることが分かった。この物質が金ナノ粒子に分散剤として結合していることが考えられた。また、菌体外成分により合成した金ナノ粒子と標品の20 nmや様々な菌体成分を用いて合成した金ナノ粒子の触媒活性を比較したところ、菌体外成分によるものが強く触媒活性を持つことが分かった。 計画段階ではDGDGの大量調製によるナノ粒子合成の制御を目指すとしていた。DGDGの大量調製のために、グルコースおよびガラクトースの糖転移酵素を大量発現させる必要があり、乳酸菌からクローニングした糖転移酵素遺伝子を増殖させ乳酸菌に導入することでDGDGの合成を行う予定であったが、この手法によるDGDGの大量合成は計画通り進んでいない。 一方で、環境中から発見したKKY-29株は様々な、金、銀、パラジウム、白金などの貴金属やカドミウム、ニッケルなどの重金属といった多様な金属に対してナノ粒子合成能力を持つことが分かった。中でも高濃度の鉛に耐性を持ち、緑鉛鉱ならびに水白鉛鉱のナノ粒子を合成することができることが分かった。鉛は人体に有害である一方で、鉛のナノ粒子は蓄電池など工業的に応用されている。KKY-29株による鉛ナノ粒子合成は有害な重金属回収技術にもつながると考え、機構の解明を目指すこととした。鉛ナノ粒子の合成後の超音波破砕液をHPLC-ICP-MSに供し鉛と結合した画分を特定した。特定した画分を分析することで、外膜タンパク質として金属イオン輸送に寄与するTonB-dependent receptorであると同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づいて乳酸菌により合成した金ナノ粒粒子が応用できることを証明する。触媒として利用する場合、菌体を反応場として活用できる可能性がある。そのため、in vitroで合成した金ナノ粒子とin vivoで合成した粒子をそれぞれ用いて反応に供与することで比較を行う。これまで菌体外成分による合成した金ナノ粒子は特に粒子径が小さく大きな触媒活性を持つことを示した。定量的な評価を行うために、反応による吸収極大波長が変化する2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを用いる。金ナノ粒子はこの還元反応の触媒として働くことが知られており、分光光度計を用いて経時変化を測定することで触媒活性を定量的に評価することができる。 また、鉛に耐性を持ち、金のほかに銀、パラジウム、白金やカドミウム、ニッケルなど多様な金属に対してナノ粒子合成能力を持つ微生物KKY-29株であるが、これまでの分析の結果、TonB-dependent receptor(TBDR)がナノ粒子合成に寄与している可能性が示唆された。合成の寄与を確かめるため、いくつかの金属濃度中で培養した菌体におけるTBDRの遺伝子発現量の解析を行う。また、TBDRは金属の輸送に寄与していると考えられ、分散剤としての寄与は小さいと考えられる。分散剤としてナノ粒子合成に寄与する成分を取得するため、ナノ粒子を菌体内から単離し、HPLC-IXP-MSに寄与することでナノ粒子に直接結合している画分を分取する。得られた画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、鉛結合物質と思われるバンドをLC-MS/MS(液体クロマトグラフ質量分析計)に供することで同定を行う。
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Research Products
(4 results)