2020 Fiscal Year Annual Research Report
植物の気孔葉緑体が持つ独自の形成メカニズムと機能の解明
Project/Area Number |
20J13660
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宋 普錫 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 葉緑体 / 孔辺細胞 / 環境応答 / 気孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、順遺伝学的なアプローチから気孔葉緑体の形成メカニズムの解明を、また逆遺伝学的な手法を用いて気孔葉緑体の固有機能の理解を目的とする。 これまでに、約1万個体のシロイヌナズナM2植物から気孔葉緑体のクロロフィル蛍光有無を指標にスクリーニングした結果、合計4系統の気孔葉緑体形成不全変異体achs(achlorophyllous stomata)の単離に成功している。その中から、気孔葉緑体の形成に重要である小胞体型の脂質代謝系に異常が観察されなかったachs4変異体を重点的に解析している。本年度は、achs4変異体のポジショナルクローニングと次世代シーケンスの結果に基づいて原因遺伝子の同定を行った。achs4変異体の原因遺伝子として推定された2つの候補遺伝子に対して、それぞれの遺伝子を導入し相補性検定を行った。その結果、achs4変異体の原因遺伝子は脂質合成酵素の一種をコードしていることが明らかになった。 また、気孔葉緑体のみが持つ機能を調べるために気孔葉緑体に存在するタンパク質に着目し、プロテオーム解析を進めている。気孔葉緑体のタンパク質を解析するために、高純度の無傷気孔葉緑体を大量に単離精製する技法を開発した。次に、気孔葉緑体と葉肉葉緑体それぞれからタンパク質を抽出し、DIA(Data independent acquisition)法によるプロテオーム比較解析を行った。その結果、気孔葉緑体で特異的に高発現しているタンパク質をプロファイリングすることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A. 順遺伝学的アプローチによる孔辺細胞の葉緑体形成を制御する分子機構の解明 B. プロテオーム解析と逆遺伝学的アプローチによる孔辺細胞の葉緑体の機能の解明 といった二つのテーマに関して、2020年度はおおむね計画していた通りの進展があった。それぞれの具体的進歩については以下に記す。 A. 当初予定していた通り、achs4変異体の原因遺伝子を同定し、相補性検定及び細胞内の局在解析を行うことができた。 B. 気孔葉緑体のタンパク質を同定するために、気孔葉緑体を単離する技法を確立することができた。また、プロテオーム解析によるタンパク質のプロファイリングにも成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
マッピング解析によるポジショナルクローニングから、気孔葉緑体形成不全変異体achs4の原因遺伝子が脂質合成酵素の一種であることが分かった。今後は、リピドミクスによる脂質のプロファイリング及びRNA-seqによる遺伝子発現解析を行い、achs4変異体の原因遺伝子である脂質合成酵素がどのように気孔の葉緑体形成に関与しているかを明らかにする予定である。また、気孔葉緑体のみを単離し、プロテオーム比較解析を行った結果、気孔葉緑体で特異的に高発現しているタンパク質をプロファイリングすることに成功した。今後、これらの候補タンパク質の中から気孔の開閉機能に直接関与する葉緑体タンパク質を同定する予定である。
|